忍足 侑士 | ナノ




恋しい時間〜とある彼の場合〜


今日は杏里とのデート。

約束の時間の10時まで後15分のところで、待ち合わせした広場に到着。
まだ愛しい彼女の姿は見えん。
今日はどんな格好してくるんやろ

杏里は何着ても可愛いんやけど、人前でミニスカートはちょっと心配やねん。
いや俺かて脚が見えるのはたまらなく好きなんやけど、他の奴には見せとうない!!
それに今日みたいな寒い日は体冷やしてまうやん。

ま、本人に言っても「自分の好きな服着てるだけなの。口出さないでよ。」とか言われんねんな、きっと。
惚れたもん負けっちゅーんはホンマやなぁ…

おっと、そんな事考えとったら時間やんか。

珍しいな杏里が時間通り来ぉへんなんて

「サムっ…」

お天気のお姉さんが今日は雪降る言うとったなぁ
空も曇ってきよった。

杏里が来たらどっか入って暖かいもんでも飲もう。

それにしても遅ない?
約束の時間から15分

なんや寝坊か電車でも乗り遅れたんやろか…
メールもきとらんし
いつもなら何かあったときは時間前に連絡くれるんに

ちょっと電話してみよか


RRRRR RRRRR RRRRR RRRRR RRRRR


出ぇへん……電車乗ってるんやろか?
メールいれとこ。

お昼にはこないだ見つけた杏里の好きそうな雰囲気のイタリアンに決まりやな。

杏里はちっこいのによう食べる。
ケーキなんか食べてる時なんてめっちゃくちゃ可愛いねんで!

作るのも上手やねん。
いつも作ってきてくる弁当は最高し、ちゃんと栄養のバランスも考えてくれとる。
めっちゃええ女やで。


って、やっぱ遅ない?
さっき電話してから30分経った……

ほんまに何かあったんやろか?
具合悪なったとか!?
事故とかやないやろな!?


さっき送ったメールも返ってこうへんし…


RRRRR RRRRRR RRRRR RRRRR RRRRR

やっぱ出ぇへん
まだ寝てるとか?

いや、それならええのやけど…

RRRRR RRRR 『もしもし「もしもし杏里!?」只今電話にでることが出来ません』

なんや、留守電かいな!
ちょおマジでなんかあったんやないやろな…?

アカン、ダメな事ばっかり考えてまう
大丈夫やて、きっと急いででて携帯家に忘れたとか寝坊して遅れたとかに決まっとる!

留守電でもええからいれとくか

RRRRR RRRRRR RRRRR RRRRR RRRRR

『只今電話にでることが出来ません。ピーという発信音の後にメッセージをどうぞ。』ピー

杏里早よ会いたい……うわぁ雪降ってきよった

お天気お姉さん大当たりっちゅー話やな。
こないな時に降って貰っても嬉しないし。

マジで寒い

あーぁ、11時になってもうた。
杏里から連絡はない。涙の前に鼻水でそうや。


〜♪〜♪
「もしもし!?」

『ぅわっ!なんだよ侑士、でかい声出して』

「ハァ…どないしたんや岳人」

『ぃや、何ってわけじゃないんだけどよ!今杏里とデート中だろ?』

「そのはずやったんやけど、また杏里がこぉへんねや。」

『はぁ?何やってんだよあの女』

「用がないなら切るで。杏里から連絡きたらあかんからな。じゃ」

『おう、またな。』


デートだってわかっとるなら電話してくんなっちゅーねん!
メールは問い合わせしてみても杏里からは着てへん。
どないしたんや杏里

肩に雪積もってきてしもたわ。
どっか屋根のあるところにでも…いや、アカンな杏里が来た時ここに俺がおらんと可哀想や。

自販機でコーヒーでも…だからアカンて、自販機は離れとるしその間に着たら可哀想やんか!

何もない何もない、もうすぐや。
ちょっと焦って、ごめん!とか言いながら来るに決まっとる。
どんな顔しても可愛ええし。

もぅ11時30分かいな。
家まで行ってみよかな

いやいや、すれ違いになってしもたらどないすんねん!
せやかて、もしかして、万が一杏里の身に何があったとしてやな、家に行った方が事情がわかるんちゃう?
もっかい電話しよ。

RRRRR RRRRRR RRRRR RRRRR RRRRR

やっぱ出えへんし。

どないしよ、俺。
ヤバい、ほんまに泣きそうや……

杏里、杏里、どないしたん?
会いたい、声聞かせて、俺一人で立ってられへんねん。
杏里がおらんと何も見えへん

なぁ、杏里…



「ゆぅぅぅぅしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

「杏里!?」

「ごめんね侑士!こんなに遅刻しちゃって!寒かったよねこんなに冷えちゃって、本当にごめん!!携っ…!?」

「っ……はぁ、心配した。」
予想しとった通り焦って、息切らして、いつもと変わらず可愛い俺だけの杏里

思わず抱きしめてしもて、声が漏れる

「ごめんねごめんね。こんな寒い中二時間も待たせちゃうなんて。どうしよう風邪引いちゃう!どっか入ろ?ね?」

そないたくさん喋らんくてもええやん。
もう十分暖かいから、もうちょいこのままいさせて欲しいんやけど、杏里が風邪引いたらあかんからお昼にしよか

「ん、行こか。」

「わっ、手も冷たい!手袋も持ってなかったの!?
どうしよう、侑士が風邪引いちゃったら、私…」

そないしょげた顔せんでや

俺まで悲しなるやん
杏里が看病してくれるんやったら引いてもえぇけど……

「なら、引かんようにおまじないして?」

ここに言うて唇を指す

調子乗るなバカ、何て言うけど唇から熱が伝わる


待ってる時間は杏里の事ばっかり考えられたし、たまには待つのもええかもしれんな

たまには、な。


end?
→彼女sideへ

あ、杏里の事ばっかり考えてんのはいつもやったわ



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