忍足 侑士 | ナノ




狼さんにご用心


「なんやの、コレ」

今私の目の前には気だるげに関西弁を話す"私"がいる。


「まじ、ミラクルじゃね?」

今俺の目の前には頭悪そうに標準語を話す"俺"がおる。


「やっべ、忍足君超いい体してんね!」

「人の体ベタベタ触らんといて!」

私達に何が起こったかというと、なんやかんやで体が入れ替わっちゃいました。
あの忍足侑士と。


「やだ、忍足君って以外とガッチリしてるんだね、髪さらさらだしうわぁぁ私、忍足君の香りがする!」
「やめてぇぇぇぇぇぇぇ!」

「いいじゃない、減るもんじゃないし。」

「減る!俺の何かが確実に減っとる!」
「私的には下の方が増えて来てる。」
「女の子がそんなこと言うたらあかぁぁぁん!ちゅーか何でそんな風になってるん!?どこにそんな要素あったん!?」
「ねぇねえ、こうゆう時ってどうすんの?」
「どうするって、そぅやんなぁ、あれや、ほら、」
「わかった、ちょっとトイレ行ってくるね☆」
「あかぁぁぁぁぁぁぁん!」

勢いよく立ち上がった私の足に忍足君が半泣きでしがみついてきた。
端から見たら、私が忍足君に泣いてすがってるみたいだよね。
よかった、もう授業始まってるから屋上には誰もいなくって。

「ただ用を足したいだけだよ忍足君!あんな事とかこんな事しようなんて、これっぽっちも思ってないよ!」

「絶対嘘やろ!いらんとこ触るに決まっとる!男の体弄んで何が楽しいんや!」
「めっちゃ楽しいしぃ!何より忍足君の体だと思うと……おっと、興奮した…」
「杏里ちゃんは俺の事嫌いなん!?」
「好きよ、忍足君の事大好き。」
「俺の事好きなんやったらもっと俺の体大事にしてやぁ!」
「好きだから触りたいのよ!納得してくれた?」
「そないな事ばっかり言うんやったら、俺もやるで!」

「なにを?」

「杏里ちゃんの胸やら触ったるからな!」

「どうぞ。」
「自分の体はもっと大事にせなあかんやろ!!」
「忍足君が言ったくせに!そんな胸でよければ、ドーゾ。これでおあいこだね☆よし、そうと決まれば…」
「頼むからここにいてぇぇぇぇぇぇぇ!!」

また私の足にしがみついてきた。
今度はガチで泣いてる。これが自分の顔じゃなかったらもっと良かったのになぁ。

私は忍足君という名の自分の肩に手を置いてゆっくり言う。
よっぽど私をここに留まらせたいのか、肩に置かれた手をガッチリ捕まれた。

「よく考えようよ忍足君。こうなった原因はわからないし、元に戻る方法もわからない」
「せや。だからちゃんと考えよぉや」
「現状は絶望的に暗い訳だよ。だったらさ、少しでもこの状況を楽しもう?」
「え?何ゆっとるん?」
「お互いピーとピーだけには気をつけようね☆」

彼は忘れている、男の力に女がかなうはずないことを……
捕まれていた腕を思いっきり振り払って私は走り出した。


後ろから聞こえる叫び声は可愛らしい。


end

さて、まずは一人で楽しむか…



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