口ほどに物を言う
最初に彼の"サイン"を見つけたのはとても暑い夏の日だった。
あの日はとても暑くて校内の至る所で飲み物を手にしてる人を見かけた。
各ゆう私もその仲間入りをしようと自販機までやってきたのだが、好物のイチゴミルクのボタンが売り切れを表示してる。
「暑い上に糖分も摂取できないっていうのか…」
私のイライラは最高潮。
けたたましく鳴く蝉すらも鬱陶しい……
しょうがなくミネラルウォーターを買って教室に戻る。
額に当てるとひんやりと気持ちいい
少し気分が落ち着いたのに私の視界を掠めたピンク色のパック
それは間違いなく私が買えなかったイチゴミルク…
恨めしげに見つめればイチゴミルクの持ち主が困ったように首を傾げた
私の隣の席
完璧を絵に描いたような白石蔵ノ介。
パーフェクトすぎて面白くない男。
「そない見つめられると困るわ」
なんてそんないい顔したって許さないわよ
イチゴミルクの恨み…
「白石君じゃなくてイチゴミルクを見てたの。さっき売り切れだったから…」
そやったん?口つける前やったら交換したったのにといって口からイチゴミルクを離す、そんな動作すら華があってムカつく。
白石君の飲みかけならさぞプレミア物でしょうね、なんて皮肉ってやろうとしたのに、私は今まで彼がくわえていたストローに釘付けになった。
クタクタになるまで噛まれたイチゴミルクのストロー
彼は無意識なのだろうか?
ストローを噛む癖は欲求不満、マザコン
女なんて選り取りみどりの白石君が欲求不満、かもしれない。
マザコンにはMが多い。
白石蔵ノ介が欲求不満のMってだけでゾクゾクしちゃう
変形するまで噛まれたストローが示す彼の深層心理、私が引きずり出してあげる。
あぁ、つり上がる口角を押さえられない
「別にいいよ。それより美味しそうなもの、見つけたから」
うっとおしかった蝉の声すら心地よく聞こえる。
あの鳴き声が止むときに"ないて"いるのは誰かしらね?
今までとは違う熱さが私を支配した。
end
(白石君って彼女いるの?)
(いてへんよ?)
(へぇ…)
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