白石 蔵ノ介 | ナノ




秘め事は密事


放課後居残って日直の仕事しとると、同じ日直の七瀬さんがため息つきながら教室に入ってきよった。
いつも明るい彼女には似合わない暗い顔

何かあったんやろか……

「用事終わったんか?」

「うん、まぁ。ごめんね仕事押しつけちゃって。」

「えぇよ。日誌書いてもろてええか?」

「りょーかい。」

また、ハァと一つ息を吐いた七瀬さん。
シャーペンを持つ手もなんや進んどらんかった。


「七瀬さん、こっち終わたで。なんや調子悪そうやけど無理せんでもおれやっとくさかいに」

「ぁ…大丈夫大丈夫!具合悪くないよ!!」

心配させまいとしてか手を大きく動かす彼女。
空元気なんはバレバレやで。

「じゃぁ悩み事あるんか?」

「そ、んなんじゃないよ…」
「俺じゃ力になれん?」

若干返事に詰まったのを聞き逃さなかった俺は、ここぞとばかりに詰め寄った。

七瀬さんの胸に秘めるは限界だったのか、俺のフェロモンが効いたのかはわからんがポツリと話し始めた。

「友達の話なんだけどね…、」

絶対自分の事のパターンやんか

「仲良くしてた男子に告白されたんだって。告白されたことには驚いたけど、別に嫌いじゃないし付き合っても良いかなと思ったらしいんだけど」

より一層表情を暗くした彼女が言葉に詰まった。
俺は促すように、しっかりと組まれた七瀬さんの手に触れる

一瞬肩を揺らしたけど、深く息を吸って言葉を続けた。

「その子、男の子の友達…四天の生徒じゃないんだけど、その友達と付き合ってたわけじゃないんだけどヤっちゃった事があるんだって……」





予想外の発言に声もでぇへんねやけど!!?



「もし、その男子と付き合ってヤったことある友達と顔会わせたときになんか気まずいよねぇ。」

また重たく息を吐いた七瀬さんをただ見つめることすら出来ん。
え?誰かに告白されたん?それは見過ごせんのやけど、返事を考えてる理由がそれなん!?



「白石君だったら嫌だよね?」

「……自分と付き合う前やったらええんやない?」

率直な意見やけど、七瀬さんとヤったとか羨ましすぎるっちゅー話や!!!!!
どこのだれやねん!!ほんまに!

「2人が付き合うこれからが大事なんちゃうんかな。」

「そぅ、かな?」

「おん。で、七瀬さんはその男と付き合うんか?」

「友達だと思ってたけど、付き合うには良い奴だと思うし…考え中」

友達の話って前振りしたの忘れとるで、この娘。
やっぱ自分の事やったやないか。

相談したええ奴で終わるほど俺は出来た男やないで。
「七瀬さんの事ずっと好きやったんやけど、俺じゃあかん?」

これは本心やし。
目を見開いた彼女は瞬きの一つもしない。
七瀬さんの瞳に俺が写っとるのがよく見える。

「えっと、白石君正気?」

「おん、俺の事好きになるんはこれからでもえぇから、付き合わん?」

「や、でも…」

「ほんまに好きやってん。このまま他の男になんて渡さへん。」

「ちょ、待って白石君。素直に嬉しいけどっ…!」

添えていた手を彼女の手に絡めて、少し引き寄せる。真っ赤な顔かわええなぁ

ほんの少し身を乗り出せば唇が触れてしまいそうな距離
俺らを隔てる机がガタリと音を立てた

「なぁ、今の話ほんまに妬けたわ」

七瀬さんが返事する前に唇を塞ぐ

日誌がクシャリとなった気がするけど知らんぷりや
時折漏れる息に混じって声が聞こえるけど、弱々しく俺の肩に触れる手が答えやろ?

ようやく唇を離すと肩で息をする七瀬さんの目にはうっすらと涙が浮かんどった。

あかんわ……焦ってやってもうた…何しとんねん俺は
最低や

よろしくお願います

蚊の鳴くような声は肯定を意味しとった
こないな形で手ぇだした男でええんか?
半ば強引に迫ったし…
いやいやいや、めっちゃ嬉しいんやけど

「ほなら、そいつ断って来ぃや。」

「ううううううん!」

ガタガタと机にブツカりながら教室を後にする七瀬さん

ほんまかわええ

これからは他の男になんて指一本も触れさせへんから、覚悟しときや

過去のお遊びなんて、"お遊び"やったて思わせたるわ


end

(他に誰とヤったか聞いとかなあかんな)
(忍足侑士ともヤった事あるのは死んでも内緒にしよう)

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