企画リクエスト | ナノ






「死に晒せや一氏ユウジ!!!!」
「誰に口利いとんねんこの馬鹿女が!!!!!」

また始まった…
四天宝寺名物、一氏七瀬カップルの夫婦喧嘩
遠くで見るならええかもしれんが、こうも目の前でやられたらかなわんっちゅー話や!!

「お前等喧嘩すんのは仲ようてええけど、人の目の前ですなや。うるさい。」

「一氏ユウジっていってんでしょ!?その耳は飾りな訳!?聞いてよ白石!ユウジったらマジ信じらんないんだから!」
「ギャーギャー喚くなっちゅーねん!白石聞いてや、この女!」
「いっぺんに喋んなバカップルが!」
「ユウジは黙っててよ!」
「杏里は黙っとけ!」
「2人とも黙らんと毒手やで!?」
「そんなんで黙るのは金ちゃんだけだよ…」

2人してなんや可哀想な目でこっち見んなや!!
だいたいなんで毎日毎日飽きもせんと痴話喧嘩になんねんこいつらわ。
しかも今日に限って部活後の部室で、疲れ切った俺の目の前で!
小春すらもとっとと帰りよって…!
覚えときやほんまにっ…

「今日はなんやねん」
「明日の放課後は一緒にアイス食べに行こうって約束してたのに、ライブの打ち合わせするから行かないって言ってきたの。本当に信じらんない意味わかんない。」
「せやかてしゃーないやろ!?小春が明日しか時間ないゆーから!」
「そんなの昼休みとかに済ませればいいじゃない!」
「そない簡単なものちゃうねん!なんでわからんのや!」
「ライブも大事かもしれんけど、約束も大事なんちゃうん?」
「さすが白石わかってる!」「はぁ!?」
「ネタなんてぎょーさんあるんやろ?ちょっとあわせるだけしといて、アイス食べに行けばええやんか。」
ぶっちゃけ何でもええから早よ帰ってくれへんかな、こいつら…
日誌書き終わらへん

「そない簡単なものやないねん!大事なんや!」
「そんなのわかってるし!でも、そういって私との約束破るの何回目だと思ってんの!?」
「せやから、すまんって言うてるやろが!」
「謝ればいいと思ってるその態度が気に入らない。」
「じゃぁどないしろっちゅーねん!」

いつもの事やけど、こいつらの喧嘩の内容は結構どうでもいい事でしかあらへん。
その上、一氏も七瀬も似たもの同士で譲らないから結局まとまるもんも纏まらんのがオチや。
それに早よ気が付いて欲しいもんやな。

「まぁまぁ、七瀬もそれくらいで許したりや。一氏もいい加減にするやろうし。」
「白石はどっちの味方なの!!?」
「どっちでもあらへんけど。」
「じゃぁ、黙ってなさいよ。」
「っ…!おぉぉぉん!」

(怖ぁぁぁぁぁぁぁ!!
なんやチビるかと思た!
なんやあの目ぇは…人殺せるんちゃう?
一氏、殺られる前に逃げるんやでっ!)

心のなかで震えながら、日誌に集中することにする。もう口なんか挟まんから好きなだけやってくれ。

「だいたい、いつもいつも私の事なんて後回しでテニス漫才小春テニス漫才小春って私はなんなのよ!」
「ちゃうわ!小春テニス漫才や!」
「そんなん聞いてんじゃないし!死ね!!一万回死ね!」

そりゃ自分のこと後回しにされとったら不安にもなるわな。
テニス部も忙しい時期やし、申し訳ないなぁ

「そない言うけど杏里のあれはなんやねん、ほんまに。」
「は?」
「こないだ俺の机にあった菓子くうたやろ?知っとるんやからな!」
「だってあれは小春ちゃんが私に食べてねってくれたんだもん!」
「小春のくれたもんは俺のもんやろが!」
「日本語喋れよユウジ…」
「喋っとるわ。」
「ユウジだってこないだ私の取っておいたイチゴ食べたじゃない!」
「いつまでも食べんからいらんのやろと思って食べたったんや!」
「イチゴは最後って決まってんのよ常識で!」
「知らんがな!杏里かて先週の…!」

はぁ……
いつまで続くんや、バカップル
もうこの前の話とか別にええやろ。
絶対その場でも永遠言い合いしたんやろ?
なんて恐ろしくて言えんけどな……

「女の子にキャーキャー言われていい気になってんじゃないの!?」
「他の男子にちょっと優しくされただけで勘違いしとんのとちゃうん!?」

「ユウジが格好いいのは私だけが知ってればいいのよ!」
「杏里を甘やかすんは俺だけやっちゅーねん!」

なんの話しとるん、こいつら……
しかもお互い急に黙りよって気色悪い。

「そっそんなのわかってるし!」
「おぉおおれかて、杏里が見てるからカッコつけとんねん…!」

忘れとったわ…
こいつらの着地点はいつも想像を越えたとこにあるんや。
そして、はたから見た喧嘩が日常会話やと言うことを…

「なんや腹減ったわ、アイスでも食べて帰ろや。早よせんとおいてくで、アホ!」
「うっさいオクラ!今行くし!じゃ、白石また明日ー。」

「おん、気をつけて帰りやー」

嵐のようやったわほんまに。
やっと日誌も書き終わったし、俺も早よ帰って明日に備えよか。
バカップルは絶対に明日、放課後の予定について騒ぐに決まっとるからな…

鹿鹿

(聞いてよ白石!昨日さんざん言ったのにユウジったら何もわかってないの!)
(お前こそなんでわからんのや!)
(頼むから余所でやってや…)


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