彼は僕の首を絞める。
きつく、キツく、キツク。
朦朧としていく意識はもはや白いだけのただの風景でしかないのかもしれない。いや、もはや風景やそんな視覚的なものなんかじゃあないのだ。
脳に浮かぶ一種のまやかしなんだろうか。
呼吸が止まる。瞼が閉じる。
聴覚は恐ろしいくらい研ぎ澄まされていた。まるで呪いみたいにころすと呟く彼の声が体にだんだん澄み渡る。
だがこれから死ぬことに一切の不快感なんてなかった。むしろ情事のような享楽や、芯に伝わるような熱が僕の体を支配していく。これだから、この《行為》を僕は止められない。
「なんで、お前が」
結局、彼も憎しみのあまりに《行為》を止められないことに対しても憎しみを持っている。体の中で起こってる悪循環。
かわいそう、と唇が動けばまた首が締まる。目敏いなぁと感心しながら重くなった瞼を開けてやれば彼はボロボロと涙を流しながら手を離して僕に縋る。
ごめんなさい、ごめんなさい。
また繰り返される言葉に彼は闇にのまれる。
( 馬鹿な奴 )
他人のことは言えないが、自分もコイツも本当馬鹿な奴だ。
「ねぇ、名前。セックスしよう?」
まるで悪魔みたいに黒く染まるのは幻覚なんかじゃなく、彼の中にある黒いものが僕にも少なからずあるからだ。
わかっていた。わかっているのに僕らは《行為》を繰り返すのだ。
「っん、名前、名前っ!」
突き出されたその悪意や欲を飲み込むように僕らは全てエイリア石にのまれていく。もう、この世界には絶望しか僕たちを抱きしめてくれるものなんてないのだ。
神様なんていない。夢もない。
そう、すべて悪意に飲み込まれていく。
「ヒロ、トっ」
彼の声が耳に届く度に僕は悪夢に飲み込まれる。
初めから夢は悪夢でしかなかった
( きっと、嘘をついた子供への神様からの罰ゲーム )
( 終わりは終焉を満たすまで )
別名
管理人的に基緑じゃね?
作品。
ヒロトビッチ。