君がいない日々の意味を今肌で感じてしまい唐突に体が冷たくなった。この肌寒いイタリアの夜の空に私は顔を上げても彼はそばにいない。いないのだ。
羽織っていたカーディガンはとうの昔に風と一緒に消えてしまった。乾かない髪を夜風が過ぎれば体をさする。輝いている星空の下で顔を見上げれどあなたはそこにいない。優しく微笑んでくれた顔はもう随分先に消えてしまった。

君が生まれた街、向かい風の吹く橋の上も、今は私一人過ごすしかないのだ。
頬を撫でた優しい風も今は私の心を足りなくするばかりでしかない。

「いかなくちゃ、」

そう呟けば私は走り出していた。色あせた石畳の小路を抜けて、昼に見慣れた夜の花壇を走って。
だんだん瞳に涙が溜まり、溢れ出す。目に見えない感情が私の中をコップみたいに胸を溢れさせ熱くさせる。
忘れられない、あの日の涙で濡れたあなたの笑顔が。
なくせない、なによりも大事なものがそこにはあったのに




(名前、流れ星に何を願うの?)(秘密、フィディオだってどうなの?)
(名前が幸せになれますようにって)




いつか君と夜空の二つ星に願いを込めた。互いに願うことは似ていて、思わずその瞬間が続けばいいと思えた。君はじっと流れる星をさがして、俺の願いをを祈ってくれた。

『しってる?星は幸せにならなきゃいけない人のために輝くんだ』

そう言って抱き寄せた彼女の体温が消えないのは何時までも俺が意気地なしだから?あのときは幸せだったのに、どうしてこうなったのかもうわからない。
会いたくて仕方ないのに、もう会える術をなくした俺を君は笑うだろうか。この広い空の下に君がひとりで、君を包むものがないのなら、俺は君を抱きしめて離さないのに。

「会いに行くよ」

もう二度と目を反らさないために、そう言って走り出す行く宛はあった。色あせた石畳の小路や、見慣れた夜の花壇。全部全部俺たちの思い出を形成する景色でしかないんだ。

わかったんだ、幸せは二つで一つじゃないってことに。分けあえるものこそ、二人に許された願いだって。



「「行かなくちゃ」」

懐かしいあの春の夢を見せてくれたあの場所へ。誰よりも優しすぎる心を閉ざす前に。
会いたくて、その愛しい後ろ姿に幾度恋い焦がれたか。いま、この手をのばさせて。今君が一人なら俺は君を包む空になるから。

「会いたいよ、フィディオっ、」
「名前っ、」


流れ星にかけた願いが叶うなら
この先に新しい二人がいるなら













song by f/l/um/p/o/o/l

勢いって大事


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