柔らかな世界に違和感はない
私には愛らしい恋人がいます。
くのたまの中で、とても優秀なその恋人は誰からみても慎ましやかな大和撫子なのです。
彼女は控えめな方で、何時も私の後ろを歩きます、しかし私はそれがあまり好きではないので、学校以外では、手を繋いで共に歩もうと約束しています。

私には頭の可笑しい友人が一人います。私に関する事で異常なまでのその執着心があり、いつか彼女に向いてしまわないかとよく心配したものでした。しかし、彼女と交際を始めて4年も経てば何だかんだ、普通に接してくれるようになりました。

「名前さん。」
「どうかしましたか、撫子」

愛おしい恋人はどこか挙動不審になりながら私のそばにすり寄ります。白磁のように白い指が私の指に絡むその瞬間の感覚はとても口では言い表せないくらい恍惚としたものでした。
私は彼女の肩を抱き、大丈夫ですよと何度もさする。そうすれば彼女も落ち着いたように、頬を赤らめて私に体を任せます。
二人はたいそう仲が良いのです。

このまま平和に春になれば、祝詞をあげられるのに。


さもなにかありげな表情に殺意
伊作の行動が目に付くようになったのは冬が過ぎた頃だった。私が実習になれば、何時も私のペアになり、私のことを身を呈して守ってくれます。もし私が怪我でもしたら彼は私を傷つけた奴を尋常ではあり得ないくらい痛めつけます。通常じゃあ、あり得ないでしょう。その事を、伊作の同室である留に相談しても、どうもできない様子で誤ってくるのでした。

「名前!」

ああ、頬が痛む。留が言うには笑えばどうにかなるそうですが、どうにもなりそうに見えません。

「さっきね、小さい子虫が君のそばにいたから、つぶしたんだ」

その子虫は、私の恋人じゃあ無いですよね。

「さあね。」

そう笑う彼に何度目かわからない殺意がわくのはいつからか。


狂った愛の行方が不明
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすき愛してるの。でも君は僕を憎んだ目でしか見てくれない!嗚呼、君の殺意が僕に向けられているとき、一番君の意識が僕に向けられている!それほど憎むなら僕を愛して!ぐちゃぐちゃに陵辱して、精液まみれにしてくれたらどれだけ幸せか!

「善法寺くん、いい加減名前さんのことは」
「五月蠅いなぁ、なに、何だか精液臭いんだけど」
「っ…!最低よあなた!」
「その顔、名前に見せたら?とっても不細工」
「わ、私は、名前さんの子供が産めるのよ。あなたなんかに、負けないんだから」

ムカつく、ムカつく、ムカつく。
ああっ、名前、名前。この女、殺したい!でもそんなことをしたら、名前は悲しむだろうなぁ。
名前が哀しむところは見たくないなぁ。何時も笑ってて欲しいもの。でもね、僕は君との仲を邪魔するこの女がだぁいっきらい。

「ねぇ、お前。次の実習で殺してあげるから」
「なんの、」

嗚呼、次の実習がこれほどまでに楽しみになるなんて!うふふ、あはは!
ぶちり、と小さな音がした。小さな生命が途切れる音。
可哀想な名前の恋人さん。もうすぐおわり。足元で死ぬ飛蝗と同じみたいに。

言葉にすれば、それは真実
嫌だ、嫌だと駄々をこねるのは何時ぶりだろうか。ガキじゃああるまいし、私は泣きながらその死体にすがりつく。
綺麗だったその黒髪は無残に泥に汚れ、四散し、陶器のような白い肌は、薄汚い痣にまみれ、柔らかなその肉片には刀傷。綺麗な桜のような唇はまるで色を無くして朽ちるような色だ。
やめて、そんな約束はしていないだろう。私たちはずっと、ずっと、

「名前、」
「いやだ、一人にしないでくれ、撫子。春になったら一緒に桜をみようと約束したじゃないか!撫子、撫子!」





あの女を殺したの?通りすがりの山賊らしいね。可哀想に、散々犯されて終いには刀の試し斬り。いい終わりかただよ!あの女にお似合いじゃないか。僕から名前を奪ったあの女に、よくお似合い。
本心から笑みがこぼれ出せば僕は膝の上で眠る彼の頭をゆっくりとなでる。
ああっ、幸せ、幸せ!
やっとかれが僕の膝にいる!僕の手元に!


結局、君は僕のもの
(さて、彼が目覚めるまでに後片付けをしなきゃね)
(薬は多量でいっか。)



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