見えない圧力




スパーン、と小気味いい襖の音が聞こえれば、今月もこの時期かと思い帳簿から顔を上げた。

「やあ、文次郎。今月も、もうこの時期だね」

そう言い、目の前の奴は満面の笑みで顔にそぐわない言葉を吐いた。

「さぁ、選ばせてやろう。金額全部通すか、全額通さないで馬に繋がれて引きずられるか。」

ね?答は簡単だよね。と帳簿を俺の前に叩きつけるとまた脅すような笑みで「一文でも減らしてみな。お前が明るい所じゃあ生きれないくらい調教してあげる。」と言って去っていった。
もう俺は泣きたくて仕方がない。
去年の二の舞にならないように全額通せるかどうか、一通り計算してみるが、如何せんこの茶話代が気になる。

「先輩、それ火薬委員ですか?」
「俺はノイローゼになりそうだ。」

それだけ三木にいい、暗くなる心境をどこかに捨てて横に置いている冷めた緑茶を飲み干した。



「兵助。今月の予算は楽々オールクリアだといいね」
「はい!」

そう言って襖を開けたのは予想通り火薬委員会だった。名前のやつは笑いながら。帳簿を取り出すと「ねぇ、文次。」と呟いた。

「一個だけ、予算通せてないところがあるよ。」

えらくドスの利いた声を部屋に響かせた本人は始終甘い笑みを浮かべながら言葉に般若を潜ませていた。

「茶話代を予算とは認められない。」
「なめた口をきくね。じゃあ、学級委員長委員会はどうだい?たしか、彼らの予算はオールクリアだったそうだね。」

でも、中身。あれはほぼ茶話代じゃなかったのかな?そう言い、奴は俺だけにしか聞こえない声でえげつないことを呟く。思わず身の毛がたった。

「諦めて、火薬委員会もオールクリアしてくれなきゃ」

私、今なら殺せるよ?と笑って言い切った瞬間の空気の凍った様子と、胃がキリキリと痛むのがよくわかった。
是非とも火薬委員会とは平和に過ごさなければ。

「答えは?」
「あ゛あ゛あ゛!しょうがない!火薬委員会は予算オールクリア!」
「やったね、兵助。」

おい久々知。お前色々だまされてるってことに気付け。お前が今腕を絡めてる奴の腹の中は腐ってることに気付け。

「あ、文次郎」
「なんだ」
「ありがとう」

そう言って襖を閉めた背中を見ていた三木は苦々しい表情をしながら机に茶を置いた。もはや冷たくなったそれに口をつけるのもあまりすすまないが、奴と口論(一方的な攻撃)すると体の至る所が乾くのだ。

「あれが、もう少し性根が腐ってなきゃましなんだがな」
「それされてるのが先輩ダケだけなのにもそろそろ気づくべきです」
「左門んん―――ーーーーーっ!」



見えない圧力
(人はそれを鬼畜という。)
(言っとくけど、お前だけだから。気持ち悪い解釈したら豚箱につめてやる)








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