あ、まずった




ルールは簡単。
札の取り合い。チーム等は各自適当にやればいいという学園長の言葉には苦笑した。あくまで個人競技というのを頭の片隅においておいてくれたらいい。

とにかく、札を奪うためなら戦闘はあり。
賞品は一応出るらしいが、怪しいので私は三番目位を狙おうかな。

とにかく実地学習がはじまり二刻がすぎた頃、辺りはすっかり暗くなった。罠や作戦を立て終わった奴らは静かに戦闘を待っていた。

かくゆう私は面倒なことに眉を寄せ、気怠い体を働かせ、一様に当たりにに、さん。罠を張らせてなんだか疲れた。

とん、と背後に何か足の着く音がした。疲れて振り返るのも億劫な私は一つ指先を撫でると苦笑しながら首筋に苦無を当てる後輩の名前を呼んだ。

「おやまぁま。いくら何でも気張りすぎだろう、勘右ヱ門。」
「先輩は緩すぎです。いつか寝首かかれますよ。」
「大丈夫、大丈夫。私強いから。」

カン、と投げた苦無が木の幹に刺さると勘右ヱ門は高く後退し、合間を取る。兵助にひけをとらないくらい優秀な勘右ヱ門はへらへらした笑みを隠し、冷たい瞳を私に向けた。

「由香里さんを殴ったのは本当ですか?」
「…由香里?嗚呼、あの雌豚ね。鬱陶しいったらありゃしないよ」
「あの人は!」
「か弱くて何も出来ない女性ですよって?お前、ついに馬鹿になったんだねぇ。」

クツリとひとわらいしてやれば腰の位置を低くし、勘右ヱ門は苦無を構え私を見据えた。

「現実みろや、勘右ヱ門。私たちの生きる世界を。お前、甘ったれたあの雌豚が自分たちにないものを持ってるからひかれるんだろう?純粋で、無垢で。」

そりゃあ、幻想だ!あははと笑って苦無を投げれば一つ蜘蛛の糸のように琴線が勘右ヱ門の頬を一つ横切った。

「馬鹿だねぇ。昔から私はお前たちに言ってるじゃないか。」
「っ、」

忍びの三禁は破るもんじゃあないって。そう呟き、合間をとるように詰めれば勘右ヱ門は後ろに後退。しかし其処にあるのは太い木々だけだ。残念だね。そう耳元で一言。憤慨した様子で私の顔を睨む勘右ヱ門はやはりまだ一つ幼い男の子でしか無かったのだ。

「お馬鹿な勘右ヱ門。札はいただくね。」
「先輩は、」
「ん、」
「あの人のことをどうおもってるんですか」
「私?お前、野暮だねぇ」


ストンと、彼の頭のてっぺんに苦無を投げる。青ざめたような表情の勘右ヱ門は滑稽にみえた。だから丁寧に「私の私物を奪った雌豚でしかないよ。」と笑ってやった。ああおかしい。


「お馬鹿な勘右ヱ門も好きだけど、周りをみれない子は嫌いだよ。お前には公平に物事を見るように教えたのにねぇ。」
「まだまだ、修行が足りませんでした」
「いいんだ、他人の沙汰に顔つっこむほど、私人間出来てないから。」




闇に消えていった先輩の後ろ姿を思い出しながら、影を見た。二年生の頃の先輩。
あの頃は学級委員長委員会にいらっしゃったのに、あれほど近くでみていたのに。

審判のいろはを、教えてもらってたのに。成長していなかったのは僕だけ立ったのかと思うと泣きたくなる。
さながら、親に見捨てられた子供の


「先輩、ごめんなさい」

(最後に先輩の凶悪そうな顔だけが心残りだった。)

他の人は地雷踏まないようにしてね。という僕の願いは消えていく。

わけわかめ


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