和解はむずかしい




『せっかく、死なせてあげたのに』

そういった名前様の瞳はひどく冷たくって思わず心が底冷えした。しかし目の前にある端正な顔や息遣い、瞳の色などが体を火照らせる。
ずるい人だとおもった。

問われた問も、この時代に害をなすかどうかに対する質問なのだろう。
ああ、間違えて口でも滑らせたら私は冬四郎様に殺されていたのに。

あれ?いつかもこの感情を私は体験している。あれ?デジャヴ?
いつか、いつか、私の愛した人が、死、んだ前日、に、あれ?あれ?
私はどうして忘れてるの?あんなに愛していたのに。だから、あまりのショックに飛び降り自殺して、カミサマが、カミサマ?あれ、あれれれ。

「※※※?」

嘘だ、でもあの瞳、あの喋り方。いくらでも同じところがあるじゃない。
そうだ、私はあの人の居る世界に行きたい、そう願ったんだ。
そうだ、私が愛した唯一の人。今し方闇に消えたあの色、あの人は。私の、サイアイのヒト。



とん、と背中に鈍い痛み。あれれ、背筋に激痛。

「あなたのこと、預かりますね。」

だれ?だれだれ?
私は、どうして。






「名前、名前、本当にごめんなさい。僕が馬鹿だったんです。」

名前に一番苦しい思いを、なんていった伊作に一発どころか二、三入れようとしたら留と仙蔵に止められた。

なめんな。とりあえず殴らせろ。

「伊作、あんだけ私の事を嫌いだの最低だのいっておいての謝罪がそれ?」
「いや、あの。今度新しく出来た甘味屋の、」
「え?」
「僕と番に、」
「あ゛あ゛?」
「うわぁぁぁあん、名前が好きで死んでしまうよおおおお。」

なにあいつ、と留が呟くのが同時に私を腕をひらげて伊作を抱き留める。

「うわぁぁぁあん、まじごめんなさぁぁああい。」
「はいはい、」
「うわぁぁぁあん、そんな淡白な態度とるなら傷口抉ってやるぅぅう」
「うわああああ、留!今すぐこいつを私からはな、」

ちうー、という効果音が響けばまわりにいた四、五年生の視線が一気にこっちへささる。それを殺気立った様子で見ていたのは兵助と三郎だった。
それに抑制をかけるかのように仙蔵や留三郎達がそれを睨み返せば収まったのはいいが、いかんせん伊作は私からは離れてはくれなかった。ああ、面倒。

「あとすこし。」
「殺す、お前今日こそ実習でしとめるから!」
「むしろ俺がやりますから。しんでください。」

「むしろ、どっからでてくるんだお前も」

そう言って股から顔を出してきたのは兵助だった。私の顔を見るなり立ち上がって伊作との間に割り込み、裾で唇をきれいに拭うと満面の笑みで綺麗になりました!と私の首に抱きついた。
だいたいの主旨をこいつ等は間違えてる気がする。

「もうやだ、お前ら今日の実習で絶対しめる」






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