閑話休題





まるで鈍器で殴られたくらいの衝撃だ。いっそのこと泣いてやりたい。
まて、現状整理もそりゃあ大切さ。しかしどうしてこうなった。うわぁぁああ。

「先輩、」
「わかってる、みなまで言わないでおくれよ。」

横でうなだれてる土井先生と頭を抱えている私とまじかよ、と言わんばかりに目を見開く兵助を傍目に可愛らしくあははっと申し訳なさそうに笑う伊助と完全に絶望してる三郎次だった。
三郎次たちはただ私たちが実習で居なくなる前に整理しにくるのを知っていて、その負担を減らそうとしてくれた事はちゃんと汲んであげられる。

たとえは組だろうと、ツンデレ学年だろうと後輩は可愛いものなのだ。ちゃんと比護すべきものなのだが。

「いくらなんでも、火薬壺はダメでしょ。」
「本当に、スミマセン…」
「お前たちのどちらかが火気を持ってたら全身燃えるところだったんだよ。こればかりは私はお前たちに失望したよ」

「「え?!」」


割れた音に気付いてすぐさま桶を持って蔵に入ったからいいものの、いくらなんでも火薬を頭から被るのはいただけない。一歩間違えたら大惨事だ。

「先輩、三郎次たちが顔面蒼白です」
「知りません、自業自得です。土井先生の代わりに怒ってるんだからしょうがない」
「それもそうですが、なぁ」

うるうると大きな目を見開き、涙を溜始めるそれを見ると心がぐらつく。

『うわぁぁぁあん、名前ーっ!ひとりにしないでぇぇえ』

「うわぁぁぁあん、先輩ごめんなさぁぁあい、嫌いにならないでぇぇ」
「っく!先輩先輩、ごめんな、さいっ。次は、次は、」

(なんか、伊作とかぶるなぁ。小さい子は)

なんやかんやで、自分は本当に自分よりも弱い子に優しい。かえってそれが徒になるのだ。

「もう、わかったよ。怒らないし嫌いにならないからお風呂に入ってからまた来なさい。」
「え、」
「それに、この壷。この間文次郎に買わせた火薬だからそんな高いものじゃない。だから。気にしなくていいんだよ」
「せ、先輩!」
「近寄んない。風呂に行きなさい。」

「「は、っはい!!」」

そう言ってダッシュで走っていくよい子たちを見送って無惨に散った火薬たちを見つめた。

「あーあ、土井先生どうします?」
「うわぁ、こりゃ私が徹夜してどうにかするが、これ、日持ちがするいいやつだったのに。」
「まあ、大丈夫ですよ。また文次郎に買わせれば」
「たのんだ。」
「ふふ、先生も胃薬足りなくて大丈夫そうですか?」

ははは、と苦しそうに笑いながら先生は力なく大丈夫だと言うと箒を取りに奥へ向かった。

「俺も昔あんな事ありましたね。」
「ああ、兵助が三年生のとき?私ブチギレてボコ殴りにしたよね」
「あんなの、あいつ等に比べたらもっと危険でしたもん。」
「お馬鹿。あの時は死ぬほど心配したんだからな、」

くしゃりと薬指のない左手で頭を撫でて私は兵助をみた。照れたように笑う兵助はやはり可愛い後輩にかわりないのだ。

「先輩、大好きです」
「簡単に返してもらえると思うなよ、お馬鹿」

「お前ら、早くこっちこーい」
「「はーい」」









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