兄の暴走




「名前様っ!」
「なに、雌豚さん」
「ああっ、その言葉はほめ言葉です!!朝ご飯、召し上がっていないと久々知君から伺いましたのでどうぞ。」
「お前の作ったものはいらないよ。お前のせいで私の部屋汚すのは嫌だから早く消えて。」
「名前様に朝から罵っていただけるなんて、私、感激っ!」
「うぜぇ、ちょううぜえ。」

襖を開けて挨拶してからノンストップで罵倒する身にもなってほしい。六年間培ってきたイメージガタガタになるじゃないか。

「名前様、名前様っ、由香里のことをもっと罵ってください!」
「煩い煩いうるさぁぁあい!お前本当にしゃべんな!近寄んな!お前にかまってる暇も、酸素だって余裕はないんだ!本当に鬱陶しい!」

一発、平手で頬を叩いた。あ、やべ。やっちまった。やらかしちゃった。私の叫び声が聞こえてか、今日授業のない六年生が何事かと部屋から顔を出してるではないか。
なんか留とか伊作とか、長次たちに至ってはもっそい睨んでる。だめ、後ろからは仙蔵が部屋で腹抱えて笑ってる声がする。文次郎に至っちゃあ足音たてて近寄ってきた。ダメだ死亡フラグ。

「名前ーーーーーっ!!!!」

流石の私も文次郎に殴られてもショックはでかいので、機転を利かせ足を高く振り上げた。あ、股関節が痛い。
文次郎は憤慨した模様で私に暗器を投げてくるではないか。暴力だめ、絶対とか説得しても聞きそうではないので一応臨戦態勢として機能手入れしていた苦無を一つ抱える。

「お前、由香里さんは一般人だぞ!」
「あれのどこが一般人だ!キモンジが!」
「なにを?!由香里さんはお前の体調を気にして朝ご飯だな」
「あんな奴の不味い飯がくえるか!私はおばちゃんのB定が食いたかったんだ!」

一手一手と打ち込んでいくが、なかなか文次郎は引いてこない。むしろぶちこんでくる感覚。

「や、やめて!私のために…!」
「ふざけんなよこの塵虫が!言いたかっただけだろうがぁあ!!」
「この優男め!今日こそ…!!」
「死ね!!この年齢詐欺め!!」

どが、と一発文次郎の頬に拳をぶち込んでやれば文次郎は驚いたように目を見開いて顔を青ざめた。文次郎の下腹部にまたがり私はもう一発やつの頬にかます。
遠くで仙蔵がケラケラ笑う声や留が愁傷様だな、とため息をつく声や、いけいけモンジー!!と騒ぐ小平太の声が聞こえる。

「ちょっと!名前、君はまだ傷口が塞がって」
「伊作、今名前をあおるなっ。」

ガツンと、重たい拳の音が響く。
二発、三発。

「ホント、ムカつくんだよ!!塵虫も、伊作も留も、長次も小平太も、お前は論外だっ、」
「ふがっ、」
「なに、ホントむかつく!伊作!!」
「は、はいっ!!」

文次郎の腹部に一発蹴りを突っ込み、ずかずかと伊作に向かって私は胸ぐらを掴むと無理矢理口吸いをしてやった。やらかした。うわ、ムラムラする。

「っ、んは、名前っ」
「お前が、お前が、」

二人の唇から涎がつたう。真っ赤な顔で私の顔を見る伊作に恥ずかしくなって一発ぶち込む。
伊作は頭にでかいたんこぶを作ると地面に付した。留が焦ったような声で伊作!と叫ぶと私に「嫉妬か!!」と言った。

「こっちみんなぁぁぁぁあああ!!!!」
「ぎゃぁぁぁああ」

留が伊作と同じように地面に付した所を見た瞬間、部屋からのぞいていた六年達は一斉に戸を閉めた。ヒーヒー言いながら笑ってる仙蔵は腹を抱えながら塵虫に早く行った方がいいですよ、なんて言ってる。
チッ、逃がすなよ。そのまま処理したのに。

「名前。」
「あああ、やばい仙ちゃん。私やらかした。恥ずかしくて死ねる。」
「まぁ、今夜から実習だから軽くで済んで良かった、と言っておくよ。」

かーん、とヘムヘムが授業開始をならす鐘がよく長屋にひびいた。


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兄ぃ…ww初暴走







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