あたたかくもない、あなたに思いを




目覚めた時、朝一番に目に入る朝日が嫌い。襖一枚隔てられた世界はどうも自分に優しいという感情を教えてはくれない。
かと言って深夜の張り詰めた空気も好きにはなれない。いつ暗器や刃が自らに向くのか、誰が裏切るのか。知りたくもない情報を手に入れてしまうからだ。
好きな時間?そうだね、夕焼けの鬱陶しいくらいの赤と交じった群青が好きだから夕方がすきかな。
頬を撫でて通る優しい風が好き。

「先輩は何故忍びをしているのでしょうか、」

大好きな凛と開いた瞳が自分を射抜いていた。その瞳が今から痛々しい物を映すのかと思うと偉く悲しく感じた。自分はゆっくり微笑むと「内緒」と指を唇に当てた。
だって真意を言えば、君は何故かと追求するだろう?それなら、いっそのこと秘密にしていたら良いのだ。

「さぁ、兵助。授業にお戻り、先生が探しているよ。」

一つ年下の可愛い後輩が唇を尖らせ私を睨むが、それは愛らしさを現すだけなので意味はないのだ。

「また来ます」
「またおいで」

可愛い、可愛い兵助。

「嘘ばかりで、本当にごめんね」
酷く小さな声を発したが、自分でもわからいほど無意識に呟いた。








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