わたしをころして、





目を閉じていてください、あなたが悲しむ世界なんて俺が消して上げます。
あなたが笑う世界が、あなたが愛する世界が俺は大事なのです。

先輩、名前先輩。

あなたのみる世界を俺にも見せてください。あなたが悲観する世界を俺にも分けてください。

「兵、助」
「先輩、あなたの願い事を、聞かせてください。」

その白い鎖骨につけた紅い痕も、任務でつけた傷の縫合した痕も、憎らしいほどに何度も傷つけられた腕の傷も。

「っ、兵助。」
「先輩、俺はあなたのなんなのですか。もう嫌なんです。今こうした行為を許したのも何故ですか。あなたは、あなたは、」
「兵助、好きよ」

甘く紡がれたのはなんという言葉なのだろうか。夢?夢なのですか?

「好き、好きだよみんな。愛してる。私を捨てないで。私をつなぎ止めて。私を愛すると誓って。私を」



殺して。

まるで呪詛みたいに呟かれた言葉に心臓が冷たくなるのを感じるのと同時に、腕が自然と首筋にかかった。先輩は俺を抱き寄せると首筋に噛み付いて息を吐いた。

「いさくをすきなわたしをころして。かこをすてれないわたしをころして。あいをりかいできないわたしをころして。」

ぽとりと、布団に涙が吸い込まれた。


「もう、いやなんだ」







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