嫌い好き




嫌い嫌い、みんな嫌い
私を見てくれないみんなが嫌い。いくら100点をとったって、みんない組だから普通でしょう。と言って私の横を通り過ぎるの。
嫌い嫌い。みんな嫌い。
私を見てくれないみんなが嫌い。いくら実技を頑張っても、みんない組だから普通でしょうと言って私の肩を過ぎていくの。

けれども、独りだけ違っていたのです。
好き好き、あなたが好き。
太陽のように微笑み、私の頭を撫でて私を見て誉めてくれる。
私を抱きしめて私に偉いね、頑張ったね、と言ってくれた。

「兵助、これからも努力を惜しんではいけないよ。」

きっと、みんなその努力を気付いてお前を誉めてくれるよ。と、綺麗に微笑んでくれる貴方が好き。
私の外見だけを愛でない貴方が好き。
好き、好き。

「名前先輩、好きです。」
「私も好きよ。まともな兵助ならね」
「どんな先輩も好きです。」

先輩、先輩、私が好きなの?!嗚呼っ、幸せです。今なら私はどんな奴に、どんな事を言われても優しく、だから?と言い返せる気がします。

「名前!僕も好きだよ!」
「変態め。誰が言い返してやるか。」

でも、貴方のあの先輩に向ける笑みは嫌いなのです。あの優しく微笑み、罵し、好きと言わない貴方の表情。まるで私にはないものをあの先輩にだけあげているみたい。
悔しい、悔しい。あんな先輩に、私の先輩をとられたくない。

「嫌い、」
「え?」

そう聞き返す貴方を見れば、何だか涙が瞳からあふれてきた。ボロボロと止まることのない涙と一緒に言いたくもない醜い気持ちも一緒にあふれこぼれた。

「嫌い嫌い、私をみてくれないあなたが嫌い。」

そう言うと、貴方は慌てふためきながら私の方に手を伸ばそうとするが、そうなる前に私はその手を払い、逃げ出したのだ。
まるで、脱兎の如く。



「あの時、兵助に嫌いって言われた時の私のショックは、弟にお兄ちゃん嫌い!のレベルだった。」
「最高に傷ついてくれたんですね。お陰様で先輩が伊作先輩を殴って私を追いかけてくれてとっても嬉しかったです。」

そう言いながら口端にせんべいのかすをつけ、日向ぼっこをしてる先輩の膝に埋もれながら私は梅雨明けした爽やかな空を見上げる。
先輩は呆れた様子で微笑んで私の髪をゆっくりと梳いていく。そのしなやかな指先が私を溶かしていきそうな気がして何だか心が浮く。

「好き、愛してます先輩」

そういうと先輩は眉を悲しそうに下げ、私の前髪を弄る指を止めて睫に縁取られた綺麗な瞳を伏せた。

「簡単には、言い返してなんかやらないんだからね」

その悲しそうな声音の在処は未だに所在不明のような気がした。







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テーマ「人外ファンタジー」
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