仙蔵くんと彼




「なぁ、名前。」
「なぁに、仙蔵」

私より小さな名前の身長を見下ろしてからまた前方を見やった。視線の先では私と同室の文次郎と、名前の同室の黒井が組み手をしていた。
黒井はにこやかに笑いながらしなやかに棍棒を振り回して的確に文次郎の急所を狙い何度も突いてくる。それを苦しんだ表情で避けながら苦無で応戦してるものの、どうも苦しそうだ。

「どうしてああもあいつは黒井に勝てないのか」
「あそこの脇を上げた瞬間に苦無投げたらうさぎはよろめくのに。」

カンと鉄の交わる音がした。小平太がおお!と喚き始めた所をみると食満は負けた様子だ。伊作に至っては先ほど名前に鼻を殴られた為に保健室。
長次は面倒そうに欠伸を一つ吐きながら小平太の服の袖を掴んでいた。

名前はまだ終わらないの、文次郎きもーい。と呟いて私の隣に座った。

「まぁ、うさぎに勝てんのはこへぐらいじゃないの?」
「むしろ黒井は小平太とやり合うと骨を折りかねないから嫌らしいがな」
「オカマらしいね」
「ちょっと!聞こえてるんだからね名前ちゃん?」

黒井は文次郎の頭上目掛けて棍棒を振り下ろした。文次郎はその衝撃を受けて軽い脳震盪で終われば言いなと鼻で笑いながら次は私か、と嘆息をつく。

「仙蔵が終わったらやっと名前とだ!」
「よし、仙蔵。そいつの事燃やし尽くしてくれ」

勿論、私のためにね!と言い、名前は木陰でケラケラ笑いながら何処からか沸いてきた食満と話し始めてる。
チャイムも一向になる気配が無いところをみると、ヘムヘムは寝ているようだ。

「らしいぞ、黒井。今朝も何かしたのか?」
「股に顔突っ込んで匂い嗅いだだけ。」
「それはお前、」

お前ももはや伊作の域に、いや、昔からかお前は。と言って袖に隠している宝烙火矢を投げ出した。
コトン、と地面に落ちた瞬間に爆発し当たりを紫煙で囲む。その一瞬に後退しようとすれば、直線方向から漆黒の見慣れたそれが伸び、私の腹部にヒットする。

「仙蔵の馬鹿、髪の毛一部燃えたぞ!」
「サラストの順位も降格だな。大人しく私に譲ってもらおうか。」
「残念、私のサラストは名前に抜かれるた」

瞬間、黒井の鼻先を黒い塊、苦無が横切った。投げられた先を見れば名前が怖い顔で笑いながら舌打ちをして「手が滑っちゃった。」なんてほざいた。

「オカマ、これ以上余計な事言ったら、因幡のうさぎにするよ」
「ひぃぃいいっ!動物虐待は駄目なんだからね名前!」
「隙あり」

そう言って黒井の手に宝烙火矢を握らせて私は遠くへ逃げた。爆発の音で目が覚めたヘムヘムがチャイムを鳴らし、やっとのことで合同授業の終了を告げた。

「やだ、仙蔵。焼きうさぎどうしよう。」
「そこで生暖かい目をしてる食満にでも渡しておけ。」
「何で俺?!」







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