飛び込んで泡飛沫 | ナノ


候補生認定試験から数日、私が祓魔塾に籍を置いてから数日。
試験を受けてないせいで鶏冠頭の少年――勝呂竜士に睨まれたり、密かにフードの人――山田サンに怪しまれたりしていたものの、何とか祓魔塾には馴染み始めた。学校の方はもう知らん。

そんな今日は任務だとかでメッフィーランドなるふざけたネーミングの遊園地の入り口付近に集合させられた。何だこの理事長の趣味空間。

「皆さん、初任務どうしたはりました?」
「…どーもこーも…」

どピンク頭――志摩廉造の問い掛けに、見るからに真面目そうな小さい男の子――三輪子猫丸と竜士が口を開いた。

「僕は蝦蟇のオリの掃除をさせられました」
「俺は山奥の現場まで物資運ばされたわ」
「俺は――」

ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ。仲良さそうだね。幼なじみかなんかだっけ。私、転生してから幼なじみがとんでもない人間しかいないんだよね。暗殺者とか殺し屋とか。家業の関係で。

「…まぁ、コイツは置いといて。俺はあいつらまで候補生に上がりよったのが納得いかんわ!」

竜士の言葉と同時に、私に鋭い視線が飛んで来る。山田サンとパペット人形持った腹話術の達者な宝にも、竜士は視線を飛ばしたのだろう。言っちゃ悪いが、この面子で強いのって、私含めたこの3人だと思うんだけどねぇ。

「意外と俺らに見えへんとこで頑張ってはったのかもしれませんよ?」
「何や! 見えへんとこて! 見えるとこできばれや!」
「はいはい、あんまりぎゃんぎゃん騒がないよーに」

思わず口を挟んでしまった。別に煩わしい訳じゃないけどさ、何となく?

「大体お前は何なん? 試験終わった途端入ってきよって」
「ん? 理事長にスカウトされた」

私の返答に、竜士に青筋が見えた。廉造と子猫丸が二人掛かりで抑えている。ご苦労さんです。

「そんなに怒んなくてもいいじゃーん。ねぇ、廉造クン?」
「せやせや。可愛い女の子増えよって、ええじゃないですか。坊」

絶対女子に付いてくれそうな廉造に話を振ってみれば、案の定。子猫丸が「志摩さん……」と呆れているが、まあいいだろう。ちなみに坊、ってのは竜士のこと。事情は知らんが、廉造と子猫丸は竜士のことをそう呼んでいる。

「そうそう。刹香ちゃんてその髪、地毛なん?」
「まあねー。私、日本人じゃないし」

明らかに日本人離れした容姿だし、隠したって仕方ない。グレイシアの姓を名乗る気は一切ないけど。
そういえば純和風な超天然少女こと杜山しえみの髪色も、かなり薄かった。けどまあ、しえみは普段着が着物だしねぇ。どう考えても日本人だよね。

「え? そうなん? そんなら名前は…」
「偽名、かな。まあ、刹香ってのは本名の当て字だけどね。苗字は秘密」
「三永ってのは偽名だったのか! それに日本人じゃないって……その割りには日本語上手くね?」

剣の少年こと奥村燐が突っ込んで来る。なんか燐って、物語の主人公っぽさが半端ない。この世界が何かの漫画やら小説やらだったら、きっと主人公は燐だろう。

「生まれは日本だからね」

嘘じゃない。私が1番初めに生を受けた地は、間違いなく日本だ。

「そうだったんですね」

子猫丸も頷きながら話に入ってきて、でも結局竜士の怒りは収まってない模様。そのうち何とかなるでしょ、多分。

こうやって、こっちの世界の住人と馴れ合うのは、案外楽しい。でもどうしたって、私の世界の仲間が脳裏をちらつくから、やっぱり本当に仲良くなるのは無理なんだろう。

私は笑顔の裏に、そんな思考を隠し込んだ。誰にも気付かれないように。


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