飛び込んで泡飛沫 | ナノ


ここはどこ、私は誰?
……なんてマジで思っちゃう経験なんて2回もすると誰が思うか。



さてはて、とりあえず私はセツカ・グレイシアだ。流石にこの歳で私は誰状態には早々ならない。

ついでに言うと、転生なるものを経験している。ここはどこ以下略状態を初めて経験したのはその時だ。なんか車に撥ねられた、と思った次の瞬間見知らぬ世界にいたんだから、そりゃ無理もないだろう。
ちなみに当時、死んだ(と思われる)私の身体の年齢は16。丁度今の私と同じ歳だった。ついでに私が今の身体になった当時の身体年齢は2、自我が目覚めるのと同時だったらしい。
転生前はちょっと不良な極々普通平凡な日本人女子高生をやっていた。それが今や一家揃って有名な殺し屋次期当主だ。まったく、運命ってやつはわからない。

しかもしかも、転生した先が転生前の世界にあった漫画の世界ときた。
原作とか途中までしか読んでねーよ、○○編的な呼び名は多分コミック出てる分だけ知ってるけど。なんせ前世の親友が原作の大ファンだったもので。本誌は買ってなかったけど。

そんな訳だが、多分原作沿いの世界じゃなかった。恐らく、私が主要人物に交わった時点でパラレルワールドということになったんだろう。NGLなんて存在してなかったみたいだし。

なんてことはどうでもいい。問題は今の現状だ。

「ここはどこ? わからない。私は誰? セツカ。よし、じゃあ最後。……これ、何?」

独り言むなしい。

私の周りにふよふよと浮かぶ、黒い小さい物体。目と口がある! 何これ。ちょっと可愛いけど何だこれ。

試しに握り潰してみたら普通に潰れた。うん、待って何これ。私軽くパニック。

「おやおや、これはこれは。貴女には魍魎(コールタール)が見えているようですね」
「コールタール……? この黒い物体のこと?」
「ええ。悪魔と呼ばれるものの一種です」
「へえ。もいっこ聞いていい? あんた誰、不審者?」

突然後ろから話し掛けられたが、それ自体に驚きはなかった。そいつの存在には気付いてたもんで。
それが振り返ってびっくり、てか引いた。何このカッコ。知り合いの変態奇術師よか大分派手だ。まあアイツに比べればそれなりにまともな顔(メイク的な意味で)なのは良かったけど。
……てか、何かどっかで見たことある気がすんだけど。気のせい? いや、もしかしたらまた漫画の世界とか? 勘弁してくれ。

見ず知らずの私に不審者扱いされたソイツは「不審者とは酷いじゃないですか」とぼやいた。
……ほんとにそう思ってんなら、その胡散臭い笑顔をどうにかしろよ。

という本音は一応言わないことにしよう。このよくわかんない物体……悪魔? について何か知ってるみたいだし、とりあえず現状把握したい。あわよくば寝床確保とかそんなこと思ってないよ?

「おや、悪魔と聞いてもあまり驚かないのですね。その上何か、人には言いにくい事情があるらしい……面白い! 私について来ませんか? 生活は保証して差し上げましょう」
「…………えー……」

こんな展開ありですか。


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