狩人 短編 | ナノ


※学パロ注意



1週間の中で、1番最後の授業は好きじゃない。

どちらかといえば嫌い。
無くなっちゃえばいいのに。


中学生にもなってさ、『心』だとか『気持ち』の勉強なんて、馬鹿みたい。

そんなんでわかるんなら苦労しないよ。



ルーズリーフの端っこに、申し訳程度に書いた『人を信じるということ』という字に溜め息をついた。



「よっ。何やってんの?」

気付いたら周りには人がいなくて、窓の外からは運動部の声が聞こえている。

こんなとき、私に声をかけるのは1人だけ。


「……キルア」

「げっ、お前さっきの授業ちゃんと聞いてたワケ?」


私の手元にあったルーズリーフを覗き込んで、キルアが微かに顔をしかめる。


「馬鹿みたいじゃない?こんな授業。意味わかんない、やる必要ないよ」


信じてても、裏切られるのに。


「人を信じるなんて、自分の弱みをつくるだけ。本当に信じられるのは自分だけ」


小さく呟く。

信じて、裏切られて、信じて、また裏切られて。

そんな現実に疲れて。



「オレは…」

口を開いたキルアの声は、私の呟きに負けず劣らず小さくて。

私はその声を聞き取るために耳を澄ましてしまう。


聞きたいなんて、思ってないのに。
思ってない、はずなのに。


「オレは信じてるぜ。……お前のこと」


最後の最後でさらに小さくなった声は、それでも私の耳に届いてしまう。


……馬鹿みたい。
そう、馬鹿みたいな話だ。

でもさ、なんでなんだろうね。
ほんの少しだけ、なんていうか……。



「馬鹿みたい……」

口から飛び出した声は、驚くほど力がなかった。


「馬鹿みたいな、はずなのに」


もう裏切られたくないのに。


「あー、もうわけわかんなくなった。キルアのせいだ」


わざと明るい声で誤魔化して、ルーズリーフをぐしゃぐしゃに握り潰した。



「はぁ?何でオレ!?」


文句を言ってきたキルアに丸めたルーズリーフをぶつけた。


「それ、捨ててきてよ」

「これくらい自分でやれよ!」

「面倒だし、それに私、もう帰るから」

「ふざけんな!」


あははっ、って笑い声あげて机の脇に置いてあった鞄を引っつかんだ。


「じゃーねー、また来週!」

「じゃーねー、じゃねぇよ!ふざけんな!!」


走って逃げる。

追いかけてるのはキルアで、逃げてるのは私。

これは、本当。
嘘じゃない。




だから……なんていえばいいんだろう。

少し、ほんの少しだけなら信じてやってもいいよ。
私を信じてる、って言ってくれたあんたをさ。





ルーズリーフに綴った崩壊の予兆

(あんたは私を裏切らないって) (本当はずっと前から知ってたよ)



120106

平仮名の愛様に提出。
衝動ってすごい。


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