※現代パロで朱雨とキルア
※恋人設定
「今日ってさ、11月11日だよね」
分かりきったことを呟き、朱雨は手にしたポッキーをゆらゆらと揺らした。
朱雨の部屋で、キルアと二人。朱雨は椅子に座って、キルアはベッドに寄り掛かっていて。
すっかり日常になったその風景に飽きたように、朱雨がすとんと椅子から下りて、キルアの側に座り込んだ。
「11月11日ってあれだろ、ポッキーの日」
「うん。だから何と無く買ってみた」
私プリッツの方が好きなんだけどさ、キルアはポッキー派でしょ。
当然のことのように言われた言葉に、キルアは内心首を傾げた。何でそこで自分が出て来る? と思って。
謎は次の瞬間、あっさりと解けた。
「ポッキーゲーム、知ってる?」
首を傾げた朱雨の長い黒髪がさらりと肩から零れて、それが色香を漂わせる。
「知ってる、けど」
「じゃ、やろうか。ポッキーゲーム」
なんてこと無いように言われて、キルアは妙な気持ちになった。
ポッキーゲームは嫌じゃない。むしろ大歓迎である。が、それを彼女から誘われるのもどうなのか。
つらつらとそんなことを考えてみるも、思い返してみれば付き合い始めてからこの方、基本的に朱雨にリードされているというか主導権を握られていることに思い至って、泣きたくなった。
それはともかく。
「おお、良いぜ」
表向きは余裕そうに頷いて、その実鼓動が五月蝿い程に大きな音を立てている。持ち手の部分を銜えた朱雨に目で促されポッキーを銜えると、思った以上に顔が近くてとっさに目を逸らした。
カリカリとポッキーをかじる、その速度が朱雨に比べてだいぶ遅いことに気が付いたが、かといってこれ以上速くすることも出来なくて。ぶつかる、思った瞬間ポッキーが折れた。
折れたポッキーのこちら側を食べながら、どうしようもなく顔が熱いことを自覚する。そっと朱雨を盗み見て、平然とした朱雨に理不尽に腹が立った。
キルアと同じくポッキーを食べていた朱雨は、不意にキルアの顔をじっと見詰めた。そして、口許を綻ばせた。
「な、なんだよ」
「何でもない」
綺麗な笑みについ動揺すると、更に笑みを深められた。馬鹿にされている気もするが、どうしようもない。
顔を背けようとしたキルアは、不意に首に腕を回されてぎょっとした。
「……大人ぶっても餓鬼は餓鬼だな、って」
耳元で笑い混じり囁かれた台詞は、内容に合わぬ甘い色をしていた。
131111
ポッキーゲームなのにキスしなかったよこいつら。
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