「取り敢えず、食べながらでも自己紹介しちゃわない?」
余りに美味しそうに食べてくれるので、少しいたたまれなくなった。いつもはもっと手抜きとはいえ、あまり豪華とも言えない食事だし。
話を逸らす用途も込みで、自己紹介の流れに持ち込んだ。
「あ、すみません。自己紹介もしないで食べはじめちゃって……」
「いやいや、そんな謝らなくても良いよ」
「えっと、私、クリスタっていいます」
金髪ちゃんの名前はクリスタ。ちゃん付けしにくいし外人さんなのでクリスタで良いだろう。
「うん、クリスタね。敬語じゃなくても良いよ。私は藍織」
「うん、わかった。アイリ、よろしくね」
何だろう、同性ながらこの子すごく可愛い。
「えぇと……あなたは?」
「ユミル。一応、ご馳走になったな」
「ユミルね……って、え!? もう食べ終わったの?」
目玉焼きトーストからサラダから牛乳に至るまで、そばかすちゃん改めユミルは完食なさっていた。早っ……。
「で、あなた達が何で私の寝室に出現したかって話何だけど……」
自己紹介の後は、もうこれしか話すことはない。最後にして最大の本題である。
「その話なんだが……さっきクリスタとも話して、一応の結論は出した」
「ほんと?」
「ああ。けど、現実味はまるで無いけどな」
「でも、これが1番しっくり来るの」
躊躇うようにクリスタがユミルの顔を見上げて……って、この二人結構身長差あるなぁ。ユミルは多分目測170あるし、クリスタは150ないくらいかな。
「聞く前から現実逃避するなよ」
「うん、ごめん。聞くよ」
現実逃避はあっさりとユミルに見抜かれてしまった。
「えーっと……結論から言うね。多分、私たちは違う世界から来たんだと思う」
……あー、なんか困った顔してるクリスタも可愛いなぁ。可愛い子はどんな表情も絵になるらしい。
「戻ってこい」
「ごめんなさい」
だって待って、それって異世界ってことでしょう。
「えぇと……何を根拠に?」
これ以上現実逃避をする訳にもいかないから、取り敢えず思い付いた質問を投げた。
「そうだな……例えば、これ」
「……朝ご飯?」
ユミルが指差したのはクリスタの目玉焼きトーストだ。
「そう。私たちの世界じゃ卵なんて超高級品だし、こんな気軽に肉なんて使えない。朝ご飯に使うのは勿論、飛び入り参加の客にまで出すなんて有り得無い話だ」
「新鮮な野菜もそんなに無かったし、それにこのパン、凄い美味しいよ。向こうでは食べたことない」
当たり前のように出した朝食がこんなにも喜ばれる理由はわかった気がする。日本では卵なんて冷蔵庫にあって当然の食材だし、ベーコンを肉と意識したことは、正直あんまり無い。
「それは……日本じゃない国から来た、とかじゃなくて?」
だけど異世界はなぁ……。
「日本?」
「国……ってどういうことだよ?」
……もう一回現実逃避しても良いかな。
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