淡い光に儚い夢を | ナノ


私は恵まれた子供だった。

金持ちの家に生まれて、優しい両親と可愛い弟がいて。
やりたいことは比較的何でも出来たし、両親はそれなりに自由に息させてくれた。弟は私を好いてくれて、邪険になんてされなかった。


でも、外の世界に出ると、私は独りだった。
上辺だけの友人、上辺だけの信頼、上辺だけの言葉。
何度となく虚しいと思った。寂しいと思った。辛いと、感じた。


所詮私はちっぽけで、自分じゃ何も出来やしないのだ。両親からの無償の愛情に縋って、弟の隣に安堵して。



だから私は、家族の輪から逃げ出した。独りでも息が出来ると証明したかった。


味方のいない世界は、酸素が薄い場所も同じだ。息苦しくて、息がしたくて、結局独りで殻に閉じこもった。



だから、きっと。
あの数週間の奇跡は、私の殻を壊すために起こった出来事だったのだ。


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