鬱陶しい程晴れた空が、嫌いで嫌いで仕方なかった。この光は、私には眩し過ぎるから。
でも、雨はもっと嫌いだった。
だから、今日という日に死ねたのは、私にとって幸運だったのだろう。
雨が降りそうで降らない、薄黒い雲に覆われた空を見上げて、微かに口角を上げて、そして、それが私の最後の力だった。
なんてことない唯の平日、私は死んだ。
交通事故なんていう、有り触れた死因だった。
最後に脳内を過ぎった《心残り》を除けば、後悔はなかった。
*
「夕雨? どしたの、ぼけっとして」
「え……あ、ごめんごめん。何でもないよー」
見上げた空はいつも通り過ぎて、まあ強いて言えば雲が多かっただけで、だからきっと、あたしが感じた違和感は気のせいだったんだろう。
「じゃあ良いけどぉ……。あ、そうだ、コンビニ行かない? お腹すいちゃった」
「んー、ごめん。今日は早く帰りたいかも」
「えー……」
「ごめんねー」
「仕方ないなぁ」
何故か、早く帰らなければならない気がした。これが偶然だったのか、それとも為るべくして為った必然なのか、あたしには未だに解らない。
ただ、あたしはこの行動を後悔をしたことだけはない。
例え、先に待つのが別れだとしても。
*
「うっわ、あの地域の管轄誰だよ。面倒なことしやがって……。仕方ねぇな、俺が動かんことには始まらないみたいだし」
*
その日、とある姉妹が世界から別れを告げた。原因はいずれも、下校中の交通事故だった。
重苦しい雲が空を包む、そんなある日のことだった。
[
back ]