Present | ナノ


※アオの象徴と人形のコラボ



ただ、暇だったのだ。
だから兄に言われて、外を出歩いていただけ。

それが生んだ出会いなら、偶然っていうのかな。
それとも……必然?



Let's meet again.



「うーっ」

「なんだよエルカ」

「暇!キルア兄遊ぼ?」

「いや、オレこれから試合だって言ったろ」

「うぅーキルア兄の意地悪……」


天空闘技場にて。
暇で暇で暇なエルカは、兄のキルアを前にふて腐れていた。

どういうわけか、たまたまエルカには今日試合が組まれておらず、逆にキルアはこれから試合だ。
暇が大嫌いなエルカは、兄に構ってもらえず膨れっ面……という現状である。


「ったく……そんな暇なら、そこら辺ぶらついてりゃいいだろ?」

「……でも」

「でも言うなよ……」


可愛いが手間のかかる(一応)1つ下の妹に、キルアは溜め息をついた。

そして、切り札を出す。


「この間見つけた店な、ケーキ屋なんだけどスゲェ美味くてさ…」

「…っ!!行ってくるね、キルア兄!場所教えてっ!!」


……こいついつか食い物で釣られるんじゃねーか、と密かに不安になったキルアだった。





兄に教えてもらったケーキ屋まで、足音も軽やかに向かうエルカ。

と、途中でポケットから中途半端に出ていたハンカチが落ちたのだが、エルカは気付かない。


「…落としたよ」


不意にぽんと肩に手を置かれ、エルカは飛び上がった。
とっさにハンカチを拾ってくれたらしい人から身を引く。

――私が……気付かなかった!?

エルカは幼いが、それでも殺し屋としての自負はある。
気配に気付かないことなど滅多にあることではない。

――この人…私より強い……。

顔が強張る。

天空闘技場で負けることは、ある。
でもそれはあくまでもフィールド内の話。
現実世界で不意打ちなど受けたことはないし、危なかったら逃げられる。

でも、今目の前にいる人からは……逃げる自信が、ない。


「どうした?」


怪訝な顔で、エルカの顔を覗き込む彼女は、しかし敵意があるようには見えなかった。

自然、エルカの身体から力が抜ける。


「……なんでもない!!ハンカチ、ありがとう」


ハンカチを受け取り、そして思ったことを口に出した。


「お姉さん、髪綺麗だね」

「……おぉ、ありがと」


そこからどんどんと会話が組み立てられる。
自己紹介から始まって、これからの予定まで。
ハンカチを拾ってくれた人はルイというらしい。


「ね、ね、ルイ姉これから暇ってことだよね?一緒にケーキ屋さん行こうよ!」

「あー、美味しいって今噂のあの店か。俺も気になってたし行こうかなぁ」

「やった!」


結論:何故か仲良くなりました。





「おっいしー!」

「エルカ、口にクリームついてんぞ」


今噂らしいそのケーキ屋は、案の定混んでいた。
その中でなんとか席を確保した2人は、それぞれのケーキをぱくついている。

エルカの前には、チョコレートケーキが。
ルイの前には、ケーキの王道・ショートケーキが。

ルイはエルカの口周りについたクリームを拭いてやりながら、「イチゴ食べる?」と尋ねる。
このケーキ屋では、ケーキを2つ以上注文すると、イチゴを皿に盛ったものがサービスされるという……よくわからないサービスをやっていた。

エルカが頷いたのを見て、ルイは皿からイチゴを取ってやる。

2人はすっかり打ち解けたようで、エルカも最初の恐怖は消えたようだった。




楽しい時間は、あっという間にすぎるもの。


「エルカは天空闘技場に泊まってるんだったよな?」

「うん。お兄ちゃんも一緒だよ!」

「そっか……頑張れよ」

「ありがとう!……ルイ姉も、なんか頑張ってね!!」


ポロリと師匠の愚痴を漏らしたルイに明るく言うと、苦笑いが返ってきた。


「頑張るよ」


夕日に照らされて、エルカの銀髪がオレンジ色に見える。
ふ、と一瞬目を伏せたエルカは、何かを決意したように、顔を上げた。


「ねえ……また、会える?」


酷く不安げに。

別れが寂しかった。
友達なんていなかったから。欲しいとも思わなかったけど。
……だけど、このまま別れるのは、嫌。
また会える?

揺れる瞳を見て何を思ったのだろう。
ルイは微笑んだ。

それは、夕日をバックに、怖いまでに美しかった。


「当たり前。また会えるって」

「……うん!!」


エルカは、今日1番の笑顔を見せた。



また会おうね。

笑って、手を振った。


(ただいまキルア兄!……あのね、私ね、すっごい楽しかったよ)



12****

ひとみ様へ相互記念に。




[ back ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -