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※人形番外編



それは、エルカが初めて天空闘技場に来たときのことだった。


1階では軽く蹴ったら相手が吹っ飛んでいってしまって、会場は驚きに包まれた。

全然力入れなかったのに、と違う意味でエルカも驚く。



その日30階に上がって、試合もなく何をしようか考えていた。



「帰ってくるな、って言われたもんなぁ」


つまらなそうに唇を尖らせたエルカは、不意に顔を輝かせた。



「そうだ、キルア兄に会いに行こーっと!!」


先程の膨れっ面はどこへ行ったのか、満面の笑顔でエルカはエレベーターに飛び乗った。




「……そういえば、キルア兄どこにいるんだろ」





「キルア兄っ!!」



案外あっさりと兄は見つかった。

10歳に満たない子供が150階クラスにいるのだ、すぐに噂はエルカの耳に入った。



「キルア兄ーっ、おーい!!」


150階をうろついていたキルアを見つけ、飛びつく。


「うわっ!!……ってエルカかよ、びっくりしたー」

「あれ、あんまりびっくりしてない?」



突然現れたエルカに驚いてはいるものの、仰天するほどではないキルアの反応に、エルカは首を傾げる。



「ああ、そろそろ来る頃だと思ったからさ」

「あ、そっかぁ」


エルカは6歳になったばかり。
兄も確か6歳で天空闘技場に来たんだっけ、とエルカは納得する。

それと同時に、ポロリとエルカの瞳から涙が零れた。



「え、ちょっエルカ?どうかしたのか?」

「うっ…ふぇ、あのね……キル、ア兄がいなくて、ヒック…さ、みしかった……!!」


ぎゅうっ、とキルアに抱き着きながら泣くエルカに、とりあえずキルアは場所を移動することにした。

7歳にしては中々の判断力である。




移動先は、キルアの部屋。

100階以上のクラスでは個室が与えられるため、キルアは天空闘技場に寝泊まりしているのだ。


未だ泣き止まないエルカに困りながらも、抱き着いて来るので抱きしめ返してやる。


そのうち、落ち着いたらしいエルカだが、中々離れようとしなかった。



「エルカ、離れろよ」


ろくに身動きが取れないので言ってみる。

けれど返ってきたのは、

「いや」

という言葉。


「…なんかお菓子やるよ」

「えぇー……じゃあね、チョコロボくん!」

「それは駄目」

「じゃあ離れないっ!!」


悪戯っ子の笑顔を見せてエルカは、キルアに抱き着く力を強めた。


「……仕方ねーな」

「え、チョコロボくんくれるの?」

「1つだけだからな!」

「やったぁー!!キルア兄大好きっ!!」


兄妹の好みは似ている。
キルア同様、エルカもチョコロボくんが大好きだった。


「やるから離れろよ」

「えー……」

「離れなきゃやんない」

「……キルア兄の意地悪」


頬を膨らませて離れると、その頬を突かれる。


「キルア兄意地悪ばっかりぃ……」

「悪ぃ悪ぃ」


ちっとも悪びれずに謝ると、部屋の隅に積んであったチョコロボくんのひとつをエルカに放る。

うまくキャッチして、エルカは早速食べはじめた。



「ねぇ、キルア兄」


チョコロボくんを食べながら、エルカが呼ぶ。


「ん?」

「……だぁい好きっ」


ぱぁっと笑顔になると、食べかけのチョコロボくんを放り出してエルカはキルアに再び抱き着いた。


「……またかよ」


呆れた声でいいながらも、抱きしめ返すキルアの手は優しい。



「あのね、ずっと大好きだよ!!」

「はいはい」



窓から差し込む夕日だけが、じゃれあう2人を見ていた。



12****

イラストのお礼にもなっていないお礼にひとみ様へ。




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