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※現代パロ……?



その日、紅覇は物凄く不機嫌だった。理由は単純明快、恋人であるなまえが、一日中彼の兄の話をしていたからである。

「紅明さんって素敵だよねぇ。笑顔とかさ、……うーん、綺麗、とかじゃないんだけど魅力的だと思う」
「……ふ〜ん」
「紅炎さんはさ、凄い色気だよね。大人の魅力ってヤツ? あれ絶対モテるって」
「…………」

恋人の家に行ったにも拘わらず、男の……それも自分の兄の魅力を語られている。それももう一時間以上だ。もともと心の余り広くない紅覇にしてみれば堪ったものではない。
しかも当のなまえと言えば、ニコニコとそれはもう素晴らしい笑顔で話を続けているのだ。もやもやとした気持ちを我慢するのも限界があるというもの。

「でさぁ……」
「なまえ、」
「ん? 紅覇どうしたの?」

こてん、と幼い仕草で首を傾げたなまえに、紅覇は問答無用で口付けた。
雰囲気もへったくれもないキスに、なまえはしぱしぱと目を瞬く。そして口を離された瞬間、納得がいったように、クスリと笑った。

「何笑ってるのさ」

むすっとした表情の紅覇に半眼で睨まれながら、なまえはクスクス笑いを止めない。

「……嫉妬した?」

一通り笑ってから、なまえは問い掛けた。因みに、今日一番の笑顔のおまけ付きである。

「したよ〜? だってお前、僕以外の男の話するんだもん」
「素直だね。否定すると思ったのに」
「したって意味ないでしょ〜?」
「そうかも」

楽しそうに、嬉しそうに笑いながら、なまえは紅覇に抱き着いた。単純なもので、それだけで紅覇の機嫌はあっさりと直る。
そうと知っているなまえは、抱き着いた状態のまま、囁くような声で言った。

「嫉妬しなくても、私は紅覇が一番好きだよ」
「当然でしょ〜? 僕以外を好きになったら怒るからね」
「どうだろ。紅覇、私を飽きさせないでよ?」

返された言葉に頷いて、唇を耳に寄せた。

「……僕以外、好きになれないようにしてあげる。覚悟しててね」

耳に息が掛かったのか、擽ったそうに身を捩るなまえをぎゅう、と抱きしめると、お返しと言わんばかりに顔を上げたなまえからキスを喰らった。
「……もう手遅れかも」

小さく笑ったなまえの言葉に「それは好都合だね〜」と紅覇も笑い返した。



130331

星空飛行の京子さまへ相互記念として捧げます。




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