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「今日は……誰もいない、か」

慣れちゃってたから少し静けさが寂しいかな。と呟くと、すかさずユミルに頭を小突かれた。

「説明したりお前のフォローするこっちの身にもなれっての」
「う……その節はご迷惑おかけしました」
「全くだ」

久々に、三人だけの一日が始まる。





今日の朝食は少しだけ手抜きだ。トーストに昨日の残り物やジャムを挟んだだけ。それでも食卓が賑やかなのは、昨日の残りにコロッケやポテトサラダがあったからだろう。

「こういう静かな食事って良いよね」
「クリスタ、それ向こうの食堂を全否定してるぞ」
「あ……そっか。向こうは食堂だったんだね」
「当たり前だろ。一々別個に食べるような贅沢なことはないさ」
「……そう、だよね」
「アイリ……?」

そうだ。ここは、二人の居場所じゃないのだ。

そんなことに今更気付いて、藍織は動揺していた。





「アイリ」

食卓の片付けを終わらせたアイリが部屋に引っ込んでいると、クリスタが控えめにドアを開いた。

「入って良いよ」
「うん。……ねぇ、アイリ」
「何?」
「私、私もユミルも、アイリのことは大好きだよ」
「? 突然どうしたの?」

唐突な告白に、藍織は首を傾げる。

「あのね。私たちは確かにこの世界の人間じゃないから……いつかは向こうに帰らなきゃいけないよ」
「クリスタ、何を……」
「聞いて。帰らなきゃいけないけど、でもね。この世界に居場所を作ってくれたのは、アイリだよ」
「……そ、か」
「ありがとう」

クリスタは、藍織の心の内に気付いて、慰めてくれたのだろう。

「私……何か余計なこと考えてたみたい。二人がいなくなっちゃったら寂しいけど、それまではちゃんと、居場所守るよ。ありがとう、クリスタ」

にっこり、と返って来たのは満面の笑顔だった。

「ユミルも。心配してくれたんだね」
「何だよ、気付いてたのか」
「ドアの隙間から一瞬見えたんだもの」
「昨日から悩んでたみたいだからな、考え過ぎだよ。お前は」
「そうかなぁ」
「考えてたって何も変わらないだろ。まだ帰る方法すらわかんねぇんだからよ」
「……そうだね」

藍織は、ゆっくりと口角を上げて笑ってみせた。

後何日、三人で過ごせるのかはわからない。気付いたら二人とも、大切な存在になっていた。
別れるのは辛いけど、きっといつかはその時が来る。だからせめて、それまでは三人の思い出を作ろう。

ねぇ。ユミル、クリスタ。

「……私も、二人が大好きだよ」



130916

如月様へ相互記念に捧げます。無駄に長くなった感が否めませんが、楽しかったです。あまり絡めなかったキャラもいますし、ミーナとか他に出したいキャラもいたんですが如何せん力不足で……。如月様、これから仲良くしてくださいね。

次ページにておまけ。


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