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そんなことがあった、翌日。

「今日は良い天気だね」
「暑苦しいくらいだけどな」
「だれかたすけて」

いつの間にやら藍織の家で眠りに就いたはずの新入り三人は消え、入れ替わりで新しくまた三人がリビングに居たのであった。

「おう、クリスタ! これはどういうことなのか解るか?」
「あ、えっとね」

本日のお客様。ライナー、ベルトルト、アニ。





「べるべると?」
「少し違うな。ベルトルトだ」
「べるとると……えぇと、ごめんね、べるる…あれ、違う」
「あの……難しかったら短くしても良いよ」

昨日のこともあり立ち直りの速かった藍織は、ベルトルトの名前が言えないでいた。さっきからユミルが腹を抱えて笑っている。クリスタが注意しているが笑いは止みそうにない。アニは我関せずと藍織の出した紅茶……というかアイスティーを飲んでいた。
根気強く教えているライナーにも拘わらず、一向に言えるようにならない藍織を見るに見兼ねたらしいベルトルト本人が、苦笑しながら代打案を出した。

「短く……んー、ベル? ベルで良いかな?」
「うん」
「ごめんね、何か……」
「大丈夫だよ」

気にしてないよ、と笑うベルトルトに優しい人だと思いながら、その隣に座っているアニに視線を滑らせた。彼女は此処に来てから、せいぜい自己紹介の時くらいしか口を開いていない。

「えぇと、アニ? 紅茶美味しい?」
「……美味しいけど」

何でそんなこと聞くの? と言わんばかりの顔をされた。一人で何杯も飲んでいたら聞きたくもなる。

「あ、ねえ。じゃあ違う紅茶も飲む?」
「違う紅茶?」
「そう! これはダージリン何だけど、アールグレイもあるの。温かいの平気?」
「平気だよ」

心なしか嬉しそうな雰囲気(あくまで表情は変わらない)で頷いたアニを見て、クリスタが立ち上がった。

「私、入れて来るね」
「あ、おい待てよ。私も行く」
「え? あ、ありがとう、二人とも」

楽しそうなクリスタは、ティーバッグでお茶を入れることにハマったらしい。安物だが楽しげなクリスタを見て、藍織はほっこりとした気分になるのだった。

「あの二人、此処に来て長いの? 随分馴染んでるけど」
「二週間くらいかな。……ん? そういえば」

あの二人が来てから、あちらの時間軸はどうなっているのだろう。
聞けば二人が行方不明になっている等の事もないらしく、どうやら根本的に流れる時間のスピードが違うらしい。そう結論付けたのはリビングに直結した台所にいたユミルで、相変わらずそういう面では藍織は役立たずだった。

クリスタの入れたアールグレイは三人、特にアニに好評だった。こっそりと口元を綻ばせていたアニに目敏く気付いたライナーとベルトルトが笑い合っていて、それでアニがまた仏頂面になってしまったけれど。
難しい事情は脇に置いて、ここでは穏やかな空気が流れていた。


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