2nd Anniversary | ナノ




  少年Jの恋愛事情-2


※続き



「そんな訳で、ジャンは二人が使ってた部屋を使うとして……」

ユミルとクリスタは狭くてごめんね。と、藍織は苦笑した。


藍織の暮らすマンションは2LKで、一人暮らしの高校生には大分立派なマンションである。
が、二部屋ある片方は藍織の自室として本人が使っており、もう片方の藍織の弟などが泊まる際に使っている客間的存在の部屋は、ユミルとクリスタが使っていた。
そこに男子であるジャンの入れる隙は無く。かと言ってリビングで寝て貰うのもどうかという話であり。

仕方が無いので、多少手狭だが藍織の自室に女子三人、客間に新入りジャンが寝る、ということになった。布団だけは弟の持ち込みにより余っているので、問題は無い、はずだ。

「じゃあ、迷うことは無いと思うけど、一応家の中案内しとくね」
「ああ」
「あ、私たちで片付けておくから、こっちは気にしないでね」
「ありがとう、クリスタ。ユミルも」
「うげっ、私もやんのかよ……」

朝食の片付けを引き受けてくれたクリスタ(とユミル)に礼を言った藍織は、「あぁ、一応。ここリビングね」とジャンに言ってからさして広くない家の案内を始めた。





「――で、最後にここ。今日からジャンが泊まる部屋ね」

一通り案内するにしても大して時間は掛からない。さっさとラストである客間に足を踏み入れた。

「それで、ジャン」
「何だ?」
「さっきからちらちら若干視線が気になるのだけど……どうしたの?」

気付いてたのか、と表情を苦くするジャンの頬は、若干紅い。

「話してみるのも良いんじゃないかな。私、一応あなたより長く生きてるし」

恋愛相談くらい乗りますよ? と藍織が茶化すと、ジャンは「はあ!?」と声を荒げた。どうやら図星、だったらしい。

「何でっ……っつーか年上かよ!?」
「えっ。私これでも18よ?」
「見えねぇ……」
「酷いなぁ」

日本人は童顔だもの。と自分を慰めつつ、それで? と藍織はジャンを促す。

「……何で分かったんだ?」
「ん、あのね。……女の勘?」
「……女って怖ぇ」

後少し、赤くなってるよ。とは指摘すると恥ずかしいだろう、そう藍織は内心でくすり、笑う。
恋の話とは最近疎遠で、だから、少し気分が高揚しているようだった。

「あー……ただ、その、同期の訓練兵の中に微妙にアイリに似た奴がいるんだよ。顔立ちが」
「成る程。その子が好きなのね」
「一々突っ込まないでくれ……」
「ふふ。ごめんごめん。顔立ち似てるってことは、東洋系なのかな」
「ああ。東洋人の最後の末裔、らしい。ハーフらしいが」
「へぇ。最後の末裔……こっちじゃ珍しくも無いのにね」

やはり、いろいろと事情があるのだろうか。
普段特に役に立てていないとはいえ、頭の造りの良い藍織の脳内に、不愉快な『事情』が思い浮かぶ。あまり向こうの世界について聞いたことは無いが、こちら――というより日本に比べて暮らし難く治安の良くない世界というイメージがある。珍しい種族にはそれなりに苦労があるのだろうと想像するのは容易だった。

しかし、今そんなことを考えても非生産的だ。

「……言い方から見て、片想い中みたいだね」
「……うるせぇよ」
「そっかぁ。……良いねぇ」
「何が」
「恋。私もしたい」
「相談乗るとか言っといてお前は恋してないのかよ」
「身近に良い男子がいないの」

ああ、でも。と藍織は微笑む。ぎくりとジャンが身を引いたのは、件の少女と顔立ちが似ているからだからだろうか。

「強いて言うなら、今一番近くにいるのはジャンだけども」
「おっ俺は好きな人いるんで!」
「知ってるよ。冗談」

くすくすと笑った藍織は、「熱が引いたら戻っておいでね」とからかいの言葉を残して、リビングに戻って行った。

残されたジャンは、額を抑えて呻く。

「勘弁しろよ……」

呟いた言葉は、虚しく部屋に響いた。



140216


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