胸に広がる温かさ
※あれ本編夏じゃなかった? という突っ込み禁止
※ハロウィンの話に繋がっていたり
日本はイベント事が大好きだ。日本、というより日本の店舗が、であるが。イベント事に乗っかって利益を伸ばすのが目的なんだろう。
わかっていてもつい手が伸びてしまうものだ。私が今回、珍しくクリスマス商品を購入しなかったのは、ひとえにハロウィンの時のユミルの呆れ顔を思い出しただけで。
……節約ってことで。我慢我慢。
そう思いつつ、ローストチキンとブッシュ・ド・ノエルは買ってしまった私であった。
*
「そんなわけだから、今日は夕飯手抜きね」
「手抜きの割にはいつもより豪華だな」
「市販のご飯だもの」
「私はアイリの作ったので充分だよ」
「ありがとう、クリスタ」
ローストチキンは温めるだけ、あとは普段より適当に作ったスープとホームベーカリーで作り置きしてあったパンだ。
うん、美味しい。
「こんな贅沢してると何か感覚狂いそうだな」
「あ。そっか、そうだね。でもこっちにいる内に贅沢したいな」
「えぇと、……なんかごめんなさい」
がつがつとあっという間に、主にユミルによって消えていくローストチキンに感心していたら、ふと呟かれた言葉に複雑な気持ちになった。
私の過ごすこの国では、これくらいの贅沢は殆ど当たり前のことで、大した贅沢とも思わないけれど。そうか、ユミルとクリスタの世界では、私の普通が相当の贅沢なんだ。
「え、やだ謝らないでよ」
「なんでお前が謝るんだよ」
「……うん、ごめん」
「また謝った。アイリ、私達は感謝してるんだよ」
「まあな」
温かい。暖かい。
この二人ともクリスマスを過ごせて、本当に良かった。
「私達も、だよ。アイリ!」
胸に広がる温かさきっと幸せって、こういう時間のことを言うんだと思う。