君が可愛すぎるせい
※
これの設定、つまり壱號艇闘員の男主
※恋人設定
※捏造有り
世間はクリスマス、しかしこの輪壱號艇内は常と変わらぬ空気が流れていた。まあ楽しいことが大好きな壱號艇長あたりは、いつもより少し豪華な晩餐時に浴びるように酒を飲むだろうが、それは余りいつもと変わらない。
年末年始の楽しみは、元旦に纏めて壱、貳號艇闘員全員でやるので、特に特別なことは起こり得ないのだ。
「キイチ」
「……なまえ君。どうされたんですぅ?」
「え…っと、どうされた、って言われても……」
恋人同士になってから僅か一ヶ月程とは言え、何年も懲りずに「好き」だからと特に意味もなく話し掛け続けたなまえに言うことではない。
「また無意味に呼んだんですかぁ? まったく、なまえ君はいっつも煩いです」
吐かれる言葉は軽く、毒は意外と無いものだとなまえは知っている。今の場合だと、これは照れ隠しのようなものだ。
「今は違うかな。キイチ、今日って何の日か知ってる?」
「う……、知ってるに決まってるじゃないですか、クリスマスですぅ」
「そう。だから、キイチにプレゼント用意してたんだ」
何故か言い難そうに、しかしプライドの高い彼女に答えない選択肢は無かったのだろう、答えたキイチになまえはポケットから小さな箱を出した。
「ちょっと御免ね」
少し首を傾げたキイチの身体が、驚きで硬直する。不意になまえが腰を折ってキイチの首に両腕を回したのだ。状況を理解して真っ赤になったキイチは、するりと両腕を外したなまえを睨みつけた。躱されるので文句は言わないが。
「はい、これ」
睨みつけてくるキイチにくすりと笑って額に口づけ、更に赤くなるキイチの胸元を指差した。そこに光るのは、可愛らしいハートをあしらったペンダント。
「……気に入ったので急に、だ、抱き着いてきたのは許してあげますぅ」
「ん。有り難う」
「これも渡しておくね」と差し出された箱を受け取って、キイチはほんの一瞬躊躇った。が、何を躊躇う事がある? と肩から掛けていたポシェットから、受け取ったものより大きめな箱を取り出した。
「キイチもプレゼントを用意してますぅ。受け取りやがれです」
長身のなまえが目を瞬く様は、その身長に見合わず可愛くキイチの目に映る。
「有り難う」ともう一度抱きしめられそうになって、キイチは「早く開けるです」と急かした。
「……! 腕時計」
俺が前壊したの、覚えててくれたんだ。
ふわりと微笑んだなまえに、キイチはふと先程額にキスされたことを思い出す。やられっぱなしは性に合わない、どうにでもなれ、とキイチはなまえの腕を下に引いた。
「ん? どうした……」
伸び上がって、頬にキス。火照る顔を意識しながらふん、と胸を張った。
「いつもされてばかりなので、お返しですぅ!」
うわあ、となまえが両手で顔を覆う、その耳が、赤い。しゃがみ込んだままの彼が「キイチ、」と呼び掛けてきた。
「なんですかぁ?」
「ちょっと可愛すぎるから、キスしても良い?」
「……え、っちょっとなまえく……」
「御免ね、我慢しろとか今は無理」
君が可愛すぎるせいちゅ、と響いたリップ音に、キイチはまた体温が上昇するのを感じた。