※男主
シンドリアは熱帯地方だ。あまりの暑さに、以外と花の寿命は短かったりする。暑さに耐え咲くことができた花も、それなりに凛々しい色合いをしている。
そんな中、シンドリアの食客でもあるなまえは、淡いピンク色した花を見付けた。可愛らしい色にひとり微笑んだ彼の後ろから、バタバタと騒がしい足音がした。
「どうした、ピスティ」
振り返ることもせずに問うと、隣に並んだピスティの腕が、腰辺りに絡んできた。
「何見てるのー?」
場所は中庭、それなりに人目に付きやすい場所にも関わらずのスキンシップに、なまえは苦笑いをした。しかしそこは惚れた弱み、無理に引き剥がすことはしない。
「花を見てたんだ」
「花ぁ? あ、ホントだー、可愛い花」
「そうだね」
頷いて、なまえは屈み込む。そして、何本かある花を一本、心の中で謝りながらも摘み取った。
「あー、何してるの!」
軽く怒ったピスティに、ごめんごめんとこれまた軽く謝って、手に持った花をピスティの髪に差した。目を瞬くピスティににっこりと微笑んで見せる。
「うん、似合う」彼女が官服の下に着ているベビーピンクの服の色と同じ色合いのその花は、ピスティの可愛らしさによく合った。
パッと顔を輝かせて、先程怒ったはずのピスティは、嬉しそうに笑う。「ありがとー!」となまえに飛び付いた彼女が可愛くて仕方なくて、額に口づけた。
この手のやり取りには馴れきったピスティに特にリアクションを期待していなかったなまえだが、想定外に頬を染めた彼女に目を見開いた。
「あーやだやだ。これだからモテる男は」
照れ隠しか、そう文句を言ったピスティに、なまえも言い返す。
「あちらこちらで男誑かしてるピスティに言われたくないな」
過去に何人もの男を泣かせてきたことを示すその言葉に、ピスティは俯けた顔をバッと勢いよく上げた。その勢いに流石になまえも驚く。そして彼女の口から出た言葉に、嬉しそうに笑った。
「今はなまえだけだってば!」
「それは良かった」
むぅ、とむくれたピスティに、珍しい言葉を聞けたとなまえはくすくす笑う。
「いつまで笑ってるの、もー」
ポカポカと腹の辺りを殴りつつも未だ染まったピスティの頬は、髪に差された花と同じ色をしていた。
130311
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