溺れた魚 | ナノ


ユミルと“話し合い”をした、翌日。

私は、座学の試験勉強のために図書室に来ていた。あの地獄に匹敵する日常に戻らない為にも、勉強は出来ねばならない。
それに、私は何かを学ぶことは嫌いでは無かった。何かを知る度、ちゃんとした、何て言うかまともな、そんな人間になれるような気がして。

……と、図書室に来たまでは良かったのだけど。

「あ、フィリーネ。君も勉強?」
「……アルミン」

手に持った教本で判断されたのだろう、にこにこと笑う私の苦手な人。

「ええ。もうすぐ試験があるから……エレン達は?」
「そっか。大切なことだよね。エレンは……別に、僕もいつも一緒って訳じゃないから」

柔らかく苦笑するアルミンは、多分分類するなら、まともな人間、って奴なんだろう。

私みたいに汚い奴でも、ユミルみたいに周囲を気にしない奴でもない。エレンみたいに真っ直ぐ過ぎる訳でも、ミカサみたいに人間離れしてる訳でもなくて。クリスタみたいに綺麗でいようとし過ぎる訳でも、コニーとかサシャみたいにお馬鹿な訳でもない。

綺麗過ぎる訳でなく、相応に弱い所があり。そして真面目で人間性が良くて。

そして、何より頭の回転が速い。

「それはごめんなさい、いつも一緒にいるのかと思ってたわ」
「よく言われるよ。君は何だかんだでいつも一人だね」
「……ミーナとかコニーなんかとは、結構一緒にいる気がするわよ」
「そうかな。君は……いや、やっぱり何でもない」
「……気になるけど聞かないでおくわ」

一人を好んでるみたいだけど。

口ごもった彼は、そう言おうとしたんだろうか。それとも流石に、考え過ぎなのかな。

本当に、この人は怖い。
全てを見透かされている気さえして、あんまりお近づきにはなりたくないんだけど。

取り敢えず今日は、渋々彼の近くの椅子に座って黙々と勉強をすることにした。いくらなんでも、今からアルミンから離れるのは不自然に過ぎる。

災難だなぁ、と吐き出した溜め息に気付かれないように、唇を噛み締めた。



140226~140326


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