恨むなら自分の容姿を恨め。
なんてさ。私にだって解ってるよ、逆恨みだって。
それでも、どうしても気に食わないんだよ。私ってほら……性格、悪いから。
*
思い付いたことを他人に気付かれないような実行するのは、案外容易いことだった。一番の不安要素は、クリスタ本人の口から私の行為が漏れることだったけど、基本的に彼女は『良い子』だ。良い子でいるなんて馬鹿みたい、……だけど今は都合が良かった。
例えば、小さな嫌がらせだと、食事当番の際に皮をむく芋の量を彼女の分だけ増やすとか、食事の量を少し減らすとか。
まあこの辺は、クリスタ以外にも人がいるところでしか出来ないから、些細なことだけど。
だからもっと、人のいないところでもっともっと酷いことを。
バシャリ、と。冷たい音を立てて私の持っていた桶がひっくり返った。
「……っ、冷た……」
「ごめんなさいね、クリスタ。手から力が抜けたみたいで……」
狙い通り、近くにいたクリスタの靴に勢いよく水が浸水していく。
最近は天気が余りよくない。靴が乾くのには時間が掛かる。勿論クリスタだって替えの靴くらい持っているだろうけど、今の靴はしばらく使い物にならないだろう。
「あ…ううん、大丈夫」
「そう? 新しい靴なのに、悪いことしたわね」
乾いたとしても、ここから帰るまでに付着する泥で、綺麗とは言い難くなるだろうけど。
少しだけ、多分私に気付かれないように悲しげな顔をするクリスタが小気味よい。許されるなら、大声で嘲笑ってやりたいくらい。
こんなことをして悦ぶ私は馬鹿で、ちゃちで、くだらない人間だけど。
それでも人をおとしめるのは、そこそこ楽しい。特に、相手が嫌っている奴なら、尚更。
……まあ、当面の問題は。
クリスタに異常なまでに執着してるユミルに敵対心を抱かれていることだろう。
131126~131226
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