溺れた魚 | ナノ


金髪に青い綺麗な目。
一目見て、憎いと思った。





私がそれを見付けたのは、104期訓練兵団に入団したその日だった。

「貴様は何者だ!?」
「……地下街出身、フィリーネ・ミレッカーです」

教官に怒鳴られ、出身地を言うべきか迷ったものの雰囲気的に言わないわけにもいかなかったので、素直に答えた。口に出してから少し後悔した。
地下街出身、という言葉に周囲がざわめく。雑音を怒鳴り声で一蹴した教官が、私に向き直って再びがなった。
この人、さっきからずっと怒鳴ってるけど喉は大丈夫なんだろうか。なんていらん心配だろうけど。

「そうか! わざわざ地下街からご苦労だな!」

嫌な奴。地下街のことをよく知った上で皮肉を投げて来やがった。王都から派遣されたに決まってんだろうが。

「ミレッカー、貴様は何しにここに来た!?」
「……人類の役に立つためです」

テンプレート通りに言う。まさか地下街から厄介掃いされたなんて言えないし。言っても良いけど面倒臭そう。

「そうか! 貴様には尊い犠牲になってもらおう!」

死ぬ前に逃げるわ。犠牲なんて真っ平御免。

「次! 貴様は何者だ!?」

喉嗄らしちまえ。

テンプレ通り答えたので、地下街について突っ込まれたこと以外は特にダメージなし。脳内で言い返すに留めてやる気のない敬礼をしていた手を下げた。外面繕いは得意だから、やる気なさそうには見えなかっただろう。

「後ろを向け!」

列の終わりまで言ったらしい。言われるがままに後ろを向いて、

そして、見付けた。

緊張した面持ちの小さい女。多分私より年下。金髪碧眼のそいつは、同性の私から見ても可愛くて見た目麗しい。

……ムカつくなぁ。

気付かれないように睨みつけて、まあそいつは緊張してて気付くわけ無かったけど。

そいつの名前は、クリスタ・レンズっていうらしかった。



130826~130926


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テーマ「人外ファンタジー」
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