※華少女番外編
「ユミル」
綺麗に微笑んで自分の名前を呼んだフィリアに、ユミルは目を細めて微笑んだ。なんだか、自分らしくない。
クリスタと一緒にいることが多いユミルとフィリア。今この場に彼女の姿はなかった。アニ、ミカサと共に買出しに出ているのだ。
ユミルとフィリアは居残り組だった。彼女たちが街へ出ている間、二人は宿舎で本を読んだり、雑談をしたり。まったり流れる空気にどこか苦笑いをしたのを覚えている。
「どうした?」
「この間街に出たとき・・髪留め、みつけたの。なかなか・・渡せなくてごめんなさい、ね」
「・・私に?」
「そう、あなたにもらってほしいの」
控えめに微笑んだフィリアの掌。小さな紙袋に包まれているそれをそっと手に取る。壊してしまわないように、そっと。
慎重に袋を開ければ、中からフィリアの瞳の色をもっと濃くしたような、綺麗な色の髪留めが出てきた。ユミルはそれにぱちりと瞬きをする。フィリアが笑った。
「綺麗な色だと思って・・」
「ああ、本当に綺麗だ。フィリアの目の色をもっと濃くした色に似てるからな」
「・・?そう、かしら・・」
「無意識かよ。・・フィリア、お前がつけてくんね?」
「・・ええ、いいわ」
ユミルの掌から移動した髪留めが、フィリアの白い掌にのった。
綺麗な手だと、ユミルは思った。ところどころにできた傷が痛々しいが、綺麗な手だ。白くてお嬢様みたいな、そんな手。
フィリアはユミルの後ろにまわると、いま髪を結っていたヘアゴムを取り持ってきていたらしい櫛でそっととく。さらさらと音がして、ユミルは目を閉じた。フィリアの手の感じが、優しくて眠りそうになる。
「できた」
すっと手が離れる。ユミルはそれをおしいな、と思いながらフィリアに渡された手鏡でチェックした。黒髪の中に、色がうつる。綺麗な濃紅色。
「悪くねぇな。・・もらっとく」
「気に入ってくれて・・うれしいわ。とてもよく似合ってる」
「そうか?」
「ええ、・・きれいよ、ユミル」
『綺麗よ、****』
(・・・・)
微笑んだフィリアから視線をはずしたユミルは、小さく笑う。
首をかしげたフィリアの頭をぐしゃっと撫でて腕の中に引き込んだ。
「わっ・・・どうしたの・・?ユミル」
「・・別になんでもない。暫く抱き枕になっててくれ」
「・・?ユミル?」
「・・」
そっとフィリアの手のひらがユミルの頭を撫でた。
ユミルはその体温に、目を閉じる。
「私は、どこにもいかないわ・・ユミル」
「だから、泣かないで」
「ユミル、」
力強くフィリアを抱きしめたユミルは目を閉じた。
「ユミル」
名を呼ばれる度に湧き上がるこの感情は、なんと言うのだろう。
(ユミル?)
(・・フィリア。好きだ)
(私もユミルのこと、好きよ・・)
(・・・ああ、ありがとう)
130916
如月様から相互記念に頂きました。この、この雰囲気に私は惚れたんですよ……!! 如月様、ありがとうございます。これからよろしくお願いします。
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