Memo | ナノ


>>↓関連で縢と征陸

*act.13 リストカット

たまに、無性にアカが見たくなる。
エリミネーターで沸騰した血液じゃなくて、生きた人間の肉から流れる血を。案外、前世が殺し屋でなくても刹香は潜在犯だったのかもしれない。

さすがに私情で他人を傷付けるわけにもいかず(これ以上犯罪係数が上がったら流石に困る)、そうなると解決案は一つだけ。
ベッドに浅く腰掛け、右手にカッターナイフを握る。そのまま躊躇なく左手首に滑らせた。


「刹香ちゃん、またリスカした?」
「あー、まあ」
「ったく……」

翌日。ふと刹香の手を取った縢が、微かに眉を潜める。常習となってしまったリストカット。特に止めることはしないが、縢にとって好ましいことではないらしい。

暫く刹香の左手を弄んでいた縢は、不意にその手を口元に持って行った。
まだ新しい傷痕に、唇を押し付ける。舌を這わせ、果てには歯を立てて噛み付く。

「……っ」
「……痛い?」
「当たり前でしょ、何すんの」
「いーや、別に」

滲んだ血液を、唾液と共に飲み下した。



病んでるような病んでないような刹香。ちなみに、手首にキス=欲望を意味します。



*act.14 酒

刹香が執行官になって、約一週間が過ぎた。起きた事件はドミネーターを使わない程度のものが1、2件。信じられない程平和な国である。

その日、刹香は征陸の部屋に呼ばれた。

「お邪魔します」
「突然呼んで悪かったな」
「いえ全然。暇なんで」

通された部屋には、絵の具と酒などが混じった匂いが染み付いていた。不思議に落ち着く匂いだ。

「それで、何ですか?」
「大した用じゃないんだがな」

そう笑って掲げた手には、酒瓶が握り締められていた。

「酒、ですか」
「同じ職場で働くんだ、一杯飲み交わしておこうぜ」
「……征陸サン、私一応未成年」
「潜在犯に未成年も何もないだろうよ。それともやめておくか、お嬢ちゃん」

挑発めいた笑みを浮かべた征陸に、刹香もまさか、と笑い返して。

「お嬢ちゃん、ってのはやめてくださいよ」

と用意されていたグラスを手に取った。



征陸さんの部屋って色んな匂いがしそうだな、と。

2014/11/23 23:40

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