Memo | ナノ


>>RACK×排球ネタ

*笑視点……?


寮へ向かって歩いていた笑のポケットでケータイが鳴った。誰からかを確認せずに着信を受けると、相手はキャタナインだった。

『私だ。今は暇か?』
「キャタナイン? まあ暇っちゃ暇だけど……こんな時間に?」

エイジや敏と遊んだ帰り、時刻は22時少し前辺りだ。こんな時間に何故――もしかしてアガリがどうかしたのか? キャタナインが笑に連絡を取って来る時は、いつだってアガリ関係だ。

「アガリになんかあったのか?」
『いや、今回は違うのだ。小娘が事件に巻き込まれてな』
「小娘って……奈子? 大丈夫なのか?」
『一応はな。だがショックが大きいようで一人で帰すのは危険だからな、とりあえず来てくれ』
「あ、ああ。わかった」





笑がキャタナインに聞いた場所(廃工場)に着くと、アガリが男を抱え上げたところだった。人気のない場所なので、この場で執行≠オたのだろう、男は失神している。

「来たか仔猿」
「何があった……てゆーか奈子は?」
「小娘ならあちらだ」

キャタナインの指差す方向で、壁にもたれた奈子が膝を抱えて震えていた。

「奈子……!」
「まあ待て。先に話を聞け」
「アガリ、何があったんだよ」
「最近ここらで連続強姦殺人事件があっただろう?」
「……まさか」
「事に及ぶ前に我々が間に入って事なきを得たがな。何とかしろ仔猿」

何とかって……と呟きながらも、笑は奈子の前に膝を付いた。

「……しょう?」
「奈子……触っても平気?」

頭を撫でようとした手を一旦引っ込めてから尋ねると、一拍の間をおいて、奈子はコクリと子供の様な頷き方をした。
頭をゆっくりと撫でると、ぎゅっと服の裾が握られる。握るその手が震えていた。

「奈子、親に連絡取れるか? 迎えに来てもらった方がいいだろ」
「……今日、親両方いないんだ。だから外でご飯たべたんだけど……」

震える声を吐き出した奈子は、それでも少しは落ち着いたようだった。

「マジか。俺は寮の門限あるしな……あ、お兄さんは?」
「研磨? ……多分、大丈夫。電話してみるね」

奈子の話によく出て来る兄のことを聞くと、どうやら大丈夫らしい。ポケットから取り出したスマホを操作して、奈子は研磨の番号を呼び出した。

「……研磨?」

奈子は、電話の相手の名前を呟くと、今まで保っていた感情の糸がぷつりと切れた様だった。

「けんまぁ……っ! ぐずっ、ぅー……」

ぽろぽろと涙を零す彼女の手から、笑はそっとスマホを取り上げた。

「俺が説明する」
「ごっ……ごめ、ん」

手で涙を拭う奈子に、一応「目ぇ赤くなるから止めときなよ」と言って、笑はスマホを耳に当てた。

「すんません。奈子のお兄さん?」
『……誰』
「奈子の友達の、真藤笑。今大丈夫ですか?」
『奈子に何かあったの』
「詳しくは後で。ちょっと事件に巻き込まれて、迎えに来て欲しいんだけど」
『……場所、教えて』

場所を教えて通話を終える。
ぐずぐずと鼻を鳴らす奈子にスマホを返すと、鼻声で「ありがと」と礼を言われた。

「研磨と話、できた?」
「お兄さん、人と話すんの苦手な人?」
「うん、割とコミュ障な質なんだ。他人が苦手で」

ゆっくりと言葉を紡ぐ奈子は、小さく笑った。調子が戻ってきたようだった。





「……奈子」
「っ、研磨!」

アガリとキャタナインが男を連れて去った後。
真っ赤なジャージ姿の高校生が二人、廃工場に姿を見せると、奈子を呼んだ小柄な方に奈子が飛び付いた。せっかく落ち着いた涙が、またぽろぽろと溢れ出している。

「研磨、研磨ぁ……」
「大丈夫? もう怖くないから。なんかあってもクロが全部なんとかしてくれるから」

奈子を抱き留めて宥める言葉を掛け続ける研磨を置いて、もう一人のちょっと怖い高校生――恐らくクロという人だ――が笑の方に向かってきた。

「えーと、真藤クン? 奈子が迷惑掛けたな」
「あ、いや……。別に俺なんもしてねーし」
「詳しい話、聞いてもいいか? 本来聞くべき研磨があんな感じだから俺が代わりに」

詳しく、とは言っても笑はアガリ達から聞き及んだ程度の話しか知らないが。話を終えた後の、黒尾と名乗った彼の威圧感は痛い程だった。

「……アリガトな、真藤クン」
「奈子、少し学校休ませた方がいいかもしれない」
「そこんとこは孤爪家に任せるとこだな。ま、明日は研磨が休ませるだろうけどな」
「そんじゃ。俺は寮の門限があるから……」
「ああ、悪いな」

廃工場を出て帰る途中、ふと振り返ると黒尾に負ぶわれた奈子と、研磨がゆっくりと帰路を歩いていた。





奈子は結局、三日間だけ学校を休んだ。表向きは風邪、ということになっている。

そして。

「しょーうっ」

教室に向かっていた笑の腕に、聞き慣れた声と共に少女の腕が巻き付いた。

「おはよ、笑」
「おはよう。もう大丈夫なのか?」
「ん。ご心配おかけしました」

今日から孤爪奈子、完全復活です! と腕に絡み付いたまま奈子が笑う。

「おっはよー笑君。あれっ奈子ちゃんだ、風邪大丈夫だった?」
「エイジおはよ。もう大丈夫だよ。あ、敏も英子もおはよ」
「おー、奈子復活?」
「奈子ちゃん、休んでた間のノート取ってあるよ」
「わあっ、英子最高!」
「当ったり前だろ? 俺の彼女だぞ」
「敏の彼女である前に私の友達だし! ねっ英子」
「え、あ……」

困ったように笑う英子と、ぎゃあぎゃあ騒ぐ敏と奈子。どうやら奈子は本当に完全復活したようだった。



141031

最近文章を書いていなかったせいか乱文にも程がある。
書いていて気付いたのは、研磨と笑君の声優が同じだってことでした。

2014/10/31 07:34

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