Memo | ナノ


>>RACK×狩人ネタ

*レタンテムに目を付けられる話。


「ううう財布が寒い……」

誘導されたとも知らずに、強引に文香を路地裏に連れ込んだ男の財布を開いて、文香はため息を吐いた。ちなみに男は、気を失ってひっくり返っている。念能力を殆ど失ったとはいえ、纏さえ使えればただの人間に遅れを取ることはない。
日々の金に困る暮らしをしている文香は、「先に手を出してきたんだから自業自得だよね」という思考の下、追いはぎをして生活している。

「あー、お腹すいて死にそ……、っ!?」

再度ため息を吐いて、前のめりになっていた身を起こした瞬間、殺気を感じてその場から飛び退いた。

「えっ、何、誰!? 通り魔!?」
「ありゃ、避けられた。ざーんねん」
「避けるに決まってるでしょ、死にたくないもん!」

振り返った先にいたのは、目の下に派手なメイクを施した、青年。青年が肩に掛けている得物を見て、文香の顔が引き攣った。

「(こんな平和な国でなんちゅうもの持ってんのこの人……!)」
「追いはぎは犯罪だよな、サンソン?」
「山村だ。……ああ、そうだな」
「(増えた! てか全然気付かなかった。疲れてるなあ……)そうでもしなきゃ死んじゃうもん私」
「関係無いな。犯罪に変わりは無い」

闇に紛れていたらしい、黒髪メガネの青年が姿を見せた。彼のもつアタッシュケースに猛烈に嫌なものを感じ、文香は一気に警戒心を高める。疲れていても、こういう嫌な予感は外さない。

「っ!」

金属製の糸が、不意に文香の胴体に巻き付いた。ぐい、と黒い青年が手を引くと、連動して文香の身体が動く。どうやら拘束のつもり、らしい。

「……ハッ!」

気合いを入れて、纏で強化した身体に巻き付いた糸を強引に引きちぎる。

「な……ッ!?」
「はァ!?」
「よ、良かったあ、うまくいった……」

驚く二人を横目に胸を撫で下ろした文香は、黒い青年の隣にあるものを見て目を剥いた。

「なっ、えっ……ぎ、ギロチン!?」

アタッシュケースだと思っていたものは、どうやらコンパクトサイズのギロチンだったらしい。怖い。

「ギロチンではない。正式名称は――」
「ゴメンナサイ心底どうでもい…ぎゃっ」
「避けんなよー。さっさと死ね」
「嫌です! ていうかなんで私殺されかけてるの!?」
「アンタが犯罪者で――俺らが正義の味方だから? っよっと」

頭目掛けて軽く振るわれた得物に、咄嗟に左腕で頭部を庇うと、チクリとした痛みを感じた。文香はそれに、ぼんやりと寝不足が祟ったかな、とだけ思う。

「(甘皮一枚持ってかれたかな……)」
「なんだお前……かってぇ!」
「ケッチ!」
「なんだよ!」
「一旦引くぞ」
「はあ? なんで」
「日極さんから連絡だ。――13係について何か報告があるらしい」
「ちぇっ。ハイハイ」

軽々と得物を振り回していた青年が止まる。文香はその隙を逃さず、彼の前から逃げようとして――

「――っ」
「なッ……マジかお前……」

反射、だった。後ろで得物が振られる感覚に、しゃがみ込んで避け、咄嗟に目の前にあった“伸びていた男”をケッチと呼ばれた青年に向けて投げ飛ばす。
スッパリと綺麗に割れた男は、きっと即死だっただろう。
驚くケッチの声を背に、文香は一目散にその場を離れた。後にそれが原因で、指名手配されることになるとは夢にも思わず。


ケッチとサンソン難しいです。わかりにくくてすみません。

2014/10/30 00:22

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