Memo | ナノ


>>薄暗い進撃連載ネタ

サンプル文。



「きゃ……っ」
「あら、ごめんなさい」

バサッとクリスタの頭に馬の餌が被せられた。顔を上げるといつものように、フィリーネが薄笑いを浮かべて立っていた。彼女の後ろには馬の頭、恰(あたか)も馬に押されてバランスを崩したかのように見えるが、それは違う。クリスタとフィリーネが同じ行動をすると必ずクリスタが被害を被るのは、フィリーネがそうなるように行動しているからだ。
今回にしたってそうだ。馬に餌をやるだけなら、バランスを崩したにせよクリスタは頭から餌を被ったりはしない。わざとフィリーネが高さを調節しているのだ。

「バランス崩しちゃったわ」

申し訳ない、と餌を払うかのように伸ばされた手は、思い切りクリスタの髪を引っ張る。遠慮なしの力でクリスタの金髪がブチブチと抜けた。

「……っ」

痛い、なんて言うだけ無駄で、クリスタは声を飲み込んだ。

クリスタは、何故こうもフィリーネに嫌われているかが解らない。嫌われないように振る舞ってはいたつもりだ。気に障らないように、不愉快にさせないように。
しかし、フィリーネにはそんな行動は無駄なようで。今のように二人きりの時は勿論、同じ班になるか、そうでなくとも同じ行動を強いられる時は必ずと言って良い程、嫌がらせを受ける。例外は近くにフィリーネが苦手意識を持っているらしいユミルがいる時だ。
クリスタやユミル以外のフィリーネの評価は悪くない。クリスタに対する嫌がらせは周囲には気付かれていない。
クリスタはこんなに他人に悪意を持って接されたことは初めてだった。





「おい、フィリーネ」
「……何かしら」

夕食も終わり、よく一緒にいるコニーも男子のところに行ってしまい、一人でぼんやりとしていたフィリーネは、唐突に掛けられた声にギクリと肩を竦ませた。
振り返るとそこにいたのはやはりユミルで、フィリーネは夕食前にクリスタに馬の餌をぶち撒けたことを思い出した。フィリーネにとっては日常化しているクリスタへの嫌がらせ。理由は単に嫌いだから。目障りだから。
フィリーネはユミルのことは嫌いではない。人間性は信用出来ると思っている。
しかし苦手だ。いつもクリスタのことで突っ掛かって来るのもそうだが、彼女はいつもフィリーネを抉るような言葉を発する。本音な分だけ聞きたくない。苦し紛れの言葉ではないから聞き流せなくて辛いのだ。

「お前、またクリスタに嫌がらせしたんだってな」
「あらぁ、クリスタってば告げ口かしら。でも別にわざとじゃないわよ。馬にぶつかられてバランス崩しただけよ」
「それで頭から被るわけないだろ。それにな、告げ口じゃないさ。夕食前に珍しく風呂なんて入るから、私が聞いたんだ」
「へぇ、そうなの。それで? まさかそれについて文句を言いに来たの? 当事者じゃないくせに」
「当事者にはどうせ何も言われなかったんだろう。代理で言ってやるよ」

ああ、本当に。苦手だ。

「やるからには正面からやれよ。こそこそと恥ずかしい奴だな。お前はただ恥を曝すことしか出来ないのか?」
「……煩いわね、あんたには関係ないでしょう」

解っている弱みを突くところが、大っ嫌いよ、ユミル。
何て言ったって、あんたは痛くも痒くもないんでしょうけど。



130804

目に余る嫌がらせが増えてきて口を出すユミル。実技の実力は明らかにユミルのが上なんで全く手出しの出来ないフィリーネ。

ユミル>>フィリーネ>クリスタ

2013/08/04 23:02

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