Memo | ナノ


>>やってみたい黒バス連載

※サンプル文。
※シーンばらばら
※時系列もばらばら



*act-1 澪(中3)

春休み。その日、丁度バスケ部と陸上部の終了時間が重なったので、幼馴染みの澪と笠松は並んで歩いていた。
特に話すことも無く、ただ無言で帰路を辿る。ふと、沈黙を破るように澪が口を開いた。

「幸。私、引っ越すことになった」

突然、何の前触れも無くそう告げた澪に、笠松は「、は?」と間抜けな声を漏らした。

「引っ越す?」
「そ。りおんがさ、帝光中に入りたいんだって」
「帝光中!? あの、中学バスケ強豪のか?」
「さあ? 私バスケ詳しくないから。でもま、りおんが行くならそうじゃない?」

澪の二つ下であるりおんは、笠松の影響も多少はあるのだろう、バスケが好きだ。特に、試合を見るのが。
妹が、バスケ強豪校に入りたい。だから、澪はそれに付き合って引っ越すことになった。

「てか、帝光って東京じゃねぇか。お前、学校は……」
「転校。実は、今日部活最後だったんだ」
「何で言わなかったんだよ」
「……さあね」

遠くを見据えて、澪は小さく呟く。
――何と無く、今日言おうって決めてた。

「いつ……引っ越すのはいつだ?」
「明後日」
「明後日だぁ!?」

目を剥く笠松を余所に、澪は前を見据えた。
明後日、十年以上を暮らした街に別れを告げる。それは、幼馴染みでご近所さんでもあった笠松と、中々会えなくなることと同義だ。

自宅が見えてきた辺りで、澪は立ち止まった。

「どうした?」
「あのさ、……ほんとは、卒業式にでも言おうと思ってたんだけどさ、」
「あ?」
「好きだよ、幸。ずっと好きだった」
「は、え、……」

微かな笑顔を表情に乗せ、澪が告げる。その笑顔が酷く美しくて、告げられた言葉の内容も相俟って、笠松は二の句が継げなくなる。

「ごめん、急に。引っ越す前に言っとこうと思って」
「あ、いや……俺、は」
「ん、何も言わないで。どうせ恋愛対象になんてしてなかったんでしょ」

それくらい知ってるし、気付いてたよ。

「距離は遠くなるけどさ。絶対、落としてやるから、覚悟しといて」

それじゃあね。
口端を吊り上げ笑った澪は、くるりと踵を返し、着々と引っ越しの準備が進む家に駆け込んでいった。



*act-2 りおん(高1)

誠凜高校近くにあるマジバにて。
二人掛けのテーブル席に腰掛けたりおんは、頬杖を付いて目の前の整った顔を見上げた。鼻筋の通った顔は、素晴らしくりおんの好みである。

はぁー、近くで見たら、やっぱ尚いっそうイケメンだなー。

穴の開く程見詰めていると、困った様にその顔の持ち主が口を開いた。

「あの、りおっち。そんな見られると流石に困るっス。いや、嬉しいけど」
「えー、目の前にカッコイイ顔あったら見るっしょフツー」

対面に座った黄瀬の言葉に、りおんは仕方なく視線をずらし、ズゴゴゴと音を立ててチョコシェイクを啜った。

「てか、何で黄瀬が東京にいんの?」
「仕事っス。今度出る写真集についていろいろあって」
「あー、あれね! 買うよ買うよ」
「ほんと? 嬉しいっス! サインとかしてあげよっか」
「やだ、調子乗りすぎ。でも頂戴」

くすくすと笑うと、りおんのふわふわとした黒髪が揺れた。フライドポテトに触れそうになったそれを手で払ってやりながら、黄瀬はさりげなく柔らかい髪の感触を楽しむ。

と、りおんが黄瀬の背後を見て目を瞬いた。

「あ、火神」
「え、火神っち?」

うわあ…空気読め、という気分で黄瀬が振り返ると、全力で、体格的にも、大量に積まれたバーガー的にも、その存在を主張した男が立っていた。

「水城……と、黄瀬? お前何でいんだ?」
「仕事上がりっス。火神っちは? 自主練?」
「おう。黒子と……って黒子どこ行った?」
「ここです」

ひょっこり火神の後ろから顔を覗かせた黒子に、「おわっ。てめ、すぐ消えんなよ!」「黒子っちいたんスか!?」とデカい男共が騒ぐ。
「ずっといました」と無表情ながらも不満げな黒子に、りおんはくつくつと笑いながら声を掛けた。黒子とは一番付き合いが長いので、大分慣れているし予想も付いていたので驚かないのだ。

「黒子。自主練おつー。てか黒子も火神も自主練やんなら呼んでくれて良かったのにぃ。どーせ先輩も降旗達もいたんでしょ」
「ええ、まあ……。黄瀬くんに悪いかと思って遠慮しました」
「えっ、何で黄瀬? 私さっき連絡貰ったばっかなのに」
「黄瀬くんの行動パターンは分かりやすいですから」

りおんがオフと聞けば黄瀬は仕事が無くとも東京に来ていただろう。そもそも東京と神奈川間は時間も金もそこまで掛からない。

「黒子、取り敢えず座ろうぜ。腹減った」

火神がそう言って腰掛けたのは、りおんと黄瀬の座るすぐ隣のテーブルで。

「……黄瀬くん。すみません、お邪魔します」
「……いや、いいっス。大丈夫」

はあ、と大袈裟に溜め息を吐いた黒子に謝られ、黄瀬はりおんに悟られない様に盛大に落ち込んだ。



*act-3 姫乃(高3)

――私はきっと、高尾くんに嫌われている。

気付いたら、私は秀徳高校の一年生だった。この間第一志望の大学給費で受かって、高校の卒業式だって終わったはずなのに。

でも、そんな不可思議な出来事より、私にとって秀徳に通うことの方がずっとずっと大切だった。
大好きな漫画、黒子のバスケ。秀徳高校は、それに登場するバスケ強豪校。しかも、私の大好きなキャラ達の通う学校だったのだ。

興奮したよ。嬉しかったよ。
好かれるように、愛されるように、可愛く可愛く振る舞って。
前よりずっと可愛らしい容姿を、頑張って磨いて。

嫌われ者で、根暗で、可愛くない私なんていらない。

そうやって、きっと自分本位に可愛くなって、誰かから好かれて。

そうやって築いた私を、貴方はきっぱりと切り捨てるのです。


高尾くん。キセキの世代、緑間真太郎の相棒。私の一、二を争う程大好きなキャラ。
私は二つ年下の彼に、心底嫌われている。

態度には出さない。でも、私と接する時の目が、これっぽっちも笑ってない。

「あれ、水城サーン!今帰りな感じっすか?」
「そうだけど。高尾達も今上がり?」
「そうでっす。あ、ヤベ、真ちゃん待たせてんだった。んじゃ、お疲れ様でしたー!」
「ん、お疲れ」

ほら。澪には屈託無く話し掛ける癖に、同じマネージャーの私には見向きもしない。だから私は、澪が羨ましくて、妬ましくて。


「愛澤さー、水城のことどう思ってんの?」
「え、澪? そうだな、マネージャーとしては優秀だけど……」
「だけどー?」
「あ、わかったアレでしょ。アイツ男好きだもんねー」
「うーん、そうかも。いっつも男の子と一緒にいる」
「うわ。つかさー、バスケ部って一年にイケメンいるんでしょ? こないだ水城とそれっぽい子が一緒にいてさー」
「あ、高尾くん? 確かに澪、あの子とよく一緒にいる」
「え、マジで? サイテー。アイツに宮地君もとられたのに」
「ほんと水城って尻軽女だよねー」
「言えてる言えてる」

……馬鹿みたい。
確かに澪は男の子に人気があって、よく男の子と一緒にいるけど。それは澪が美人な上に性格が良いから自然とそうなるのであって、決して男を侍らせてる訳じゃないのに。

女子の嫉妬心をわざと煽って、噂を利用して少しでも高尾くんに嫌われてくれれば良い。
そんな甘えた、馬鹿げたことを思う私は、本当に馬鹿みたいだ。


「……姫ちゃん? どうかした、ぼーっとしてるけど」
「……何でもない」
「そうは見えないけど」
「澪には関係ないでしょ。何? 私優しいですアピール?」
「違うって。何でも良いけどさ、ドリンク出来たから配ってきて。そろそろ休憩に入るはずだから」

レギュラー陣の分のドリンクを渡されて、私は澪の傍を離れる。
澪の言う通り、休憩に入ったレギュラーの皆に可愛く作った笑顔で「お疲れー」とドリンクを渡していった。向こうの方から、レギュラーとは別に練習していた部員にドリンクを配る澪に、「先輩、先輩」と話し掛ける後輩達の声が聞こえた。

「高尾くん、緑間くん。お疲れ。はい、ドリンク」
「どーも」
「ありがとうございます」

素っ気ない返事は、きっと澪相手なら違うのかなって。そう思って、誰からも好かれる澪が邪魔にすら思えた。



140223

笠松先輩に長いこと片想いしてる澪。黄瀬の気持ちに一切気付かないりおんと火神と、気付いてる黒子っち。高尾に好かれてる澪に嫉妬する高尾に嫌われてる姫乃ちゃんと、澪を鬱陶しく思ってる姫乃ちゃんのクラスメート。

こんな三人の黒バス連載がやってみたい。もしかしたらMemo内で続くかも。

2014/02/23 21:54

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