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「つっかれた…」
今年入った一年の一人が、予想以上に使えない。さすがは組とか、あれはもうそういう問題ではない。潮江先輩は怒鳴るし、神崎はまたどこかへいこうとするし、もう一人の任暁は問題ないけれど、既に今後が心配なのは気のせいじゃない。ああもう早く寝よう、と重いながら障子を開けて、思わず一歩下がった。
「は?」
「あ、三木ヱ門くん帰り〜。とりあえずお風呂入ってきなよ。」
「はい?」
「はい、これ夜着でしょ。すごい顔してるから早く行ってきな。疲れは髪によくないから。」
「え、あ、ちょ…」
意味のわからないことばかりで、聞きたいこともいっぱいあるのだけれど。
とりあえず、風呂にはいってこよう。つかれきった体はそう結論を出して、あわよくば夢であってくれと渡された夜着を握り締めて思った。
「あ、おかえりー」
「なんでいるんですか」
出迎えてくれたゆるい笑顔に、とげとげしい言葉を返してしまうのは仕方ない。何せここは三木ヱ門の一人部屋だ。大して親しくもないのに遊びに来たというのならまだわかる。だが、当たり前のように布団が二枚敷かれている光景は、そうではないことを物語っていた。
「ん〜、三木ヱ門くんの部屋にお泊りさせてもらおうかなあ、と思って。」
「…なぜ」
「なんとなく〜?」
「お帰りください。」
冗談じゃない!昨日知り合ったばかりの得体の知れない人間と一晩過ごすなんて!理由もあってないような代物だし、そもそもなぜそんな考えにいたるんだ!おっちょくられているのか?!
「だってねー、さみしいじゃない。」
「…はあ?」
「他の子達はみんな一人部屋でしょ?」
「…まあ、そうですね。」
「だから、ね?」
「…だからなんだっていうんですか。」
ぜんぜん理由として成立していない。そもそも三木ヱ門は寂しいとしてもこんな人間とともに過ごしたくはないというのに。ふざけないでほしい。
「まあまあ、とりあえず勘弁してよ。いざとなったらたたき出していいからさ。これ使ったら造作もないでしょ?」
そういってタカ丸が指差したのは隅に寄せられていたユリコだ。本音を言えば今すぐたたき出したいが、さすがにユリコを使うほどではない。まあいいだろう。アイドルには心の広さも必要だ。
「ほらほら、なら早く寝るよ〜」
「う、わ!」
思わぬ力で引きずられて、布団をかけられる。久しぶりに聞いた「おやすみ」という言葉に、小さく返して目を閉じた。
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