04 嘘みたいな事











引っ越す前にいた地元の友人たち、お元気ですか。わたくし相田千鶴、想像以上に楽しく過ごしております!







(まさか紗雪と会うとは思わなかった!)


むしろ想像出来たら凄いだろう。紗雪とは小学校の頃の塾で会ったのだ。
お互い親に期待されて受けた中学受験、超難関を受ける訳ではなかったけれどそこそこ難しい中学に入るのはそれなりに勉強しなければ入れない。でもうちも紗雪も勉強嫌いで、ある程度こなしたらいつも二人で喋っていたのを覚えている。4年生くらいのとき親に言われたけど小学校受験をしなかったのは、小学校くらい公立で居たかったから。小学校から制服なんかお断りってことさ!



とまぁ話はずれたけども、一先ず大阪に来たその日からうちはエンジョイしているのだ。

昼休みに担任に呼び出されたと思えば話は部活のことらしい。こんな時期なのだから皆引退してるだろうし入る必要はないんじゃと聞けば、そうもいかないようだ。引き継ぎはしているが卒業するその瞬間までその部活の¨部員¨の一人とカウントするらしく、その理由と言えば推薦等で早く受験が終わった三年がよく部活に入り浸るのでこういう制度にしたらしい。気分転換に部活に参加するのも一興ということだ。
加えて文化部運動部両方入るのが規則だとか。なんだそれ。時期も時期だから片方でいいよと言われたが、今更だなんて。



「嫌だよ先生、こんな中途半端な…うちいじめられちゃうよ」
「何やねんその被害妄想は。前のガッコでは何入ってたんや」
「女テニのマネージャー」
「ほぉ。じゃあ女テニでええやんか」
「ええー芸がないよ」
「お前は部活に芸求めとんのか」



でも今更入って馴染めないだろって思ったのは本当だ。そんなの入ったとしても楽しめない。職員室の中で文句をたらたら言っていれば(題して職員室の中心で文句を叫ぶ。古いか。)隣の机から声がかかる。



「センセ、その子うちで預かったりますわぁ」
「渡邊先生」
「え、誰ですか」
「渡邊オサムや、テニス部の顧問やねん」
「今芸がないって言ったばっかなんすけど渡邊オサムさん」
「うち入れば暇はしないでぇ、ねちっこいのも部活内ではあらへんしな」
「えー、でも」
「じゃあいっちょ頼みますわ渡邊先生」
「任せときー」
「えなに決定事項??」



目の前で勝手に決まっていくうちの部活、とんとん拍子に進んでいくのが目に見えて逆に笑える。どこから出したのか入部届けに名前をかかれ、生徒手帳出せと言われる。素直に出せばそれも勝手に書かれ何故か保護者印の所に担任の印、そして隣に渡邊先生の印が押されぽんと返される。



「これで今日からうちの部員やでー」
「マジでか!なんだこの流れ!」



目の前の渡邊先生は豪快に笑ったまま。オサムちゃんでええで、と言われたのでそう呼ぶことにした。放課後テニスコート来いということを告げられたところで見事にチャイムがなりうちに質問タイムとかが与えられることはなかった。大阪、恐ろしい。

そこからあっという間に放課後になる。そもそもテニスコートの場所がうちは分からない!隣の席の子に聞けばそれはもう分かりやすく教えてくれた。助かる助かる。
言われた通りに向かえば確かにそこにはテニスコートや部員だろう人たちの影がある。目をこらせばオサムちゃんだろう後ろ姿をした人間がベンチに座っているのが見え、フェンス越しに話しかける。




「オサムちゃーん」
「おお、来よったな。中入ってきい、入口はあっちな」



オサムちゃんが指さした方向は真逆の場所。大した距離ではないけどなんだかげんなりしてしまった。
仕方なく素直に言うことを聞き言われた方に足を運ぶ。何て言おうと向こうに行かなければ入れないのだから仕方ない。マイペースに進んでいけばそのうちに着いて、かしゃんと扉を開けて中に入る。誰や、という声がこそりと言われる中を歩いていく。なんだ既に嫌な感じだぞ!オサムちゃんの嘘つき!



「ちょお、アンタ!危ないで!」
(は?)



知らない声にぱっと顔をあげれば何か黄色いものが多分こっちに向かってきている。大いに見たことがあるそれ、テニスボール。
そして残念ながらうちは反射神経はよろしくない。ああ痛い思いをする、そう思って思わず目をぎゅっとつぶった。しばらく(と言っても数秒だけれど)しても痛みは一向に来なくて、恐る恐る目を開ける。やはりというかボールはなくて、代わりに髪がきらきらと光る男の子。



「誰やーこんなとこに打ったん。アウトやで!レギュラー落ちにすんでー!」
「すいません俺ですー!謙也くんついでに俺レギュラーとちゃいますわー!」
「せやったら部員落ちや」
「ぶは、どこに落ちるんすか」
「俺の召し使い」



テニスコートに笑い声が広がる。目の前の人はボールを取りに来た後輩だろう人にボールを渡しながら、注意をしつつアドバイスをして戻らせた。時が止まったかのようにうちは動けずにいる。
彼の立ち位置と先ほどの音、そして彼が握るラケット。どうやらこの人がぶつかりそうだったボールを止めてくれたようだった。



「大丈夫か?…と、お前、転校生やんか」
「な、何故うちを」
「クラス同じやねん、あと紗雪に聞いたわ」



何でコートにおるん?と首を傾げるなんだか可愛さまでも感じる仕草をしたその人から目が離せずにいた。同じクラスに居ただろうか、これだけ派手な髪型をしていればすぐにでも覚えそうだけれど。
綺麗なきんいろをしている。それと、笑顔が似合うと思った。



「お名前は…」
「俺?忍足謙也」
「うち、相田千鶴っていいます」
「ほぉ、よろしゅうな」
「うん、それで、忍足くん」



なん?という忍足くん。ああもうなんでか、彼の周りがキラキラしている。
漫画みたいなことは信じるつもりはないしそんな馬鹿なって思っていた、でも存外そうでもないらしい。




「好きです!!」
「……はぁ?!」




一目惚れというものはどうやら実在するようだ!


(嘘だって疑ってる?でもいま現実に起きたのだから仕方ない!)
















「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -