16 密閉型違和感







「あーあぁ……」
「え?」
「あんなん言うから白石おかしなったやん」
「まじで」



あの後急に黙りこんで、腹痛いから保健室行ってくるとふらふらしながら出ていった白石の後ろ姿を見ながら謙也は呆れつつ面白そうにそう呟いた。完璧を謡う彼のあんな姿は実に貴重で、今度これをだしに何かやってやろうと目論んだ。
千鶴は何がなんだかという顔だが、謙也は白石と付き合いも長いため手に取るようにそれが分かった。白石が紗雪のことを好きだなんてことは、それこそ白石がそういった感情を持ち始めてからすぐに気付いたことだ。紗雪も白石も割と入学してからすぐに打ち解けたほうなので、二人のちょっとした雰囲気の差を意図せずとも汲み取ってしまった。それに反して彼らの思いに気付いている人は中々居ないのだから驚いたほどだ。


「それにしてもよお分かったな、紗雪のこと」
「あー、だって紗雪時々かわいいこと言うんだもん。それに、何となく分かるもんだよ!恋してるなーって」


嬉しそうに言う千鶴に謙也はへぇ、と感嘆の声をもらした。もしかしたら女の子独特の感性があって、それを感じ取ったのかもしれない。自分のことにように楽しそう笑う千鶴に謙也も思わず笑い返す。気付けば千鶴は宿題写しを大体終えていて、うんと伸びをした。白石にお礼を言おうにも本人が居ないのではどうしようもなく、とりあえずノートをとじて机に綺麗に置いた。千鶴のことだからどうせ自分と話していくだろうと謙也は頬杖をついてなぁと話しかけようとした時、別方向からの声によってそれは遮られる。


「相田ー!ジャンプ読んだか?」
「読ぉんだよぉぉまじルフィやばいって」
「ナミ可愛すぎる」
「あっ待って立ち読みしただけだから!うちにもじっくり見せて!謙也くんありがとね!」


ぱっと笑って彼女はどたどたと前方の群れの中に入っていった。一方の謙也といえば、まさにぽかん、といった感じである。先ほど千鶴を呼んだのは言うまでもなくクラスメートであって、よって謙也の友達でもある。中々気さくなその友人と千鶴はジャンプというものを媒体に繋がりを持っているらしく、楽しそうに話している。謙也とてジャンプは読んでいるがあそこまで熱く語らないせいか千鶴とそういうものを話したことはない。
彼女は謙也を好きだというが、絶対的に謙也を優先する訳ではない。少し考えればそれは簡単に分かることで、実に当然のことだとも思う。自分に普通に話す女友達が居るように、千鶴にそれが居たってなんらおかしくはないのだ。ないのだ、が。


(……なんや、気分よくないわ)


風邪かもしれんと謙也は首を傾げてから、後ろから話しかけてきた友人に笑顔で言葉を返した。






まだ、ひらけない。





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