14 不機嫌なかた






「……光ー、いつにも増して顔死んでっけど」
「…紗雪さんスか。ついでに千歳先輩」
「さっきぶりたいね財前」



紗雪は鞄片手に帰路に着くところであった。今日は新聞部での活動があるらしい由依の部活動が始まるまでの時間を教室で過ごし、時間になったところで二人は別れた。今日は軽音で特に集まる予定もなくそのまま下駄箱に向かった訳だが、どういう訳か途中で千歳に遭遇し一緒に帰ろうということで落ち着いた。二人揃ってお腹が減ったとぼやいたためにファーストフード店に寄り道することにし、今から何食べようと考えじゃんけんをしたりしていたところでテニスコートが見えた。いつもより活発に動く部員、それに比例せずいつもより嫌なオーラを纏う黒髪を見つけ千歳と紗雪は首を傾げながらコートに近より声をかけて、冒頭に至る。ベンチに座る財前は真後ろのフェンス越しに話し掛けてくる二人に顔を向ける。


「うわ、がちでだるそーな顔だ」
「今帰りスか」
「うん。マック行く」
「負けたから奢らされるハメになっとうよ、財前助けて」
「いや勝負だし」
「何に負けたんです」
「「あっち向いてホイ」」


声を揃えて言う先輩二人に財前はあからさまにため息を着いた。部活が始まる前、大会も終わり受験のため部活から遠退いた三年の元レギュラー陣が揃って部室に集まっていた。何を話していたのか自分には関係ないだろうことだったので財前は聞いておらず知らないが、まぁテニス部関係のことを話していた。しかし部長の声色がどことなくいつもと違っていて財前はふと先輩たちに目をやる。そこにはいつもと変わらないような表情を浮かべつつも不機嫌そうな元部長、彼の視線の先は度々身長がばかでかい放浪癖のある彼に送られている。当の本人はどこふく風でのんびりと窓の外を見ていた。また何かやらかしたのかと思う。
そして元部長の不機嫌のとばっちりが来たのは現部長の財前と一、二年であった。引退したばかりだというのにしごいてやるだの何だの言い、いつもより厳しいメニューを突き付けられた。無視して通常の練習をしてしまえば良いのだが、白石はにっこりと腕を組んでコートで自分たち後輩を見ていたためそうも行かない。白石が帰るまでの三十分間、財前たち後輩は動き回っていたのだ。

丁度終わった頃にやって来たのがこの二人である。大変そうだね、と他人事のように笑う軽音部の先輩、にやにやと見てくる腹立たしいテニス部の先輩。財前は何だかムカつきと同時に呆れがどんどんわいてきて、深い深いため息をまたついた。



「何かいつもよりハードじゃない、練習。どしたの、特訓?」
「アンタのせいですわ」
「は?」





(あの人が不機嫌だったのはどうせアンタ絡み)








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