13 意志疎通不可








「千歳おる?」
「サボりです」
「…真中、おる?」
「サボりです」
「……またか」




1組に顔をだして由依の答えを聞いた白石はがっくりと、予想通りだというように眉間に手をあててため息をついた。
千歳千里という男は本当に自由な男であった。転校してきてからすぐそれは理解したはずなのだが、何だか時がたちそれがいっそう強まったように思う。全国大会が終わり、千歳も色々な想いから解放されつつあるからかもしれない。そして彼のサボり癖やより酷くなったと思う。何度も注意してはいるが本人曰く卒業は出来る程度で、どうやらそれも間違ってはいないようなので白石も最近は渋々目を瞑っていた、のだが。


「どうも真中まで出席率悪なっとるしなぁ……」


千歳につられてなのかなんなのか、紗雪も夏前に比べサボりが増えた。元々夏までは大会があったりしたので、部活のために学校を休んだり授業をサボったりも少なかった。それが夏休み明けからは部活の解放からか、よく授業をサボるようになった。受験前に挑戦的だと白石は呆れたが、推薦ではないからと逆に暢気になっているらしかった。



「ほな、千歳と…真中連れてくるわ」
「紗雪なら私があとで迎え行くよ!」
「せやけど、」
「あ、でも千歳くんとふらっと一緒に戻って来る気もするんだけどね」



そう言うと少し表情を歪ませた白石に由依は首をかしげたがその理由を聞くことはなかった。事実由依が紗雪を迎えに行こうとしたとき二人していつの間にかふらりと教室に戻ってきたことが何回もある。時々二人とも戻って来なかったり、片方だけが教室に戻ってきたりなんてこともあったが。まぁそれでも二人いっぺんに戻って来る方が多いのだが、それを良しとしないような白石の顔に由依は不思議そうにするばかりであった。そうこう言っている間に扉を開ける音がして、由依がそちらを向けばやはりというかお約束な。


「あれ、白石」
「どげんしたと」


揃って教室に戻ってきた二人に由依がお帰りと声をかける。三人共に席が近いから自分の席につくが、中々言葉を発しない白石に由依と紗雪は首を傾げた。一方の千歳は白石を見ながら珍しくにやけたような何とも言い難い笑顔を浮かべている。それを見た紗雪がきもいと呟いていた。



「…千歳、放課後部室や。テニス部で話し合いあんねん」
「おお、了解」
「真中、あんまサボっとるとそこのアホみたいにくるくるパーになんで。程々にしとき」
「うん、まぁ適度に」
「なんねくるくるパーって」
「じゃあ俺は戻るわ。由依は新聞部でな」
「うん、またね」



それだけ言うと本当にさっさと戻っていった白石の後ろ姿を見送りながら、なんか怒ってんの?と目で訴えたが紗雪と由依はお互いに心当たりなし。疑問を持ったまま次に会ったときには直っているだろうと二人は新しい会話に移ったらしい。ただ一人真意に気付く千歳は、楽しそうに目を細めて笑った。





(どちらさんも、ほんに隠すのが上手いこって)







「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -