08 部活のススメ









「てか何でテニス部なの?もう三年引退してるじゃん」
「オサムちゃんがー」
「渡邊先生?お昼も言ってたよね」




テニス部マネージャーになった、と千鶴が言った後他の四人、特に謙也と白石の元テニス部勢は非常に混乱していた。引き継ぎの忙しい、そして三年不在という慣れない環境での期間限定の新たなマネージャー投入とは何事かと。居て悪いことはないのだろうが、テニス部にとっても彼女にとっても利点は少ないはずだ。謙也が「何で?!」と聞いても、千鶴はオサムちゃんが、としか答えようがなかった。事実、それ以外に理由がないのだ。
そんなこんなで昼休みは終わってしまい、千鶴への質問コーナーは打ち切られた。今日は文化部の部活動もないと言うことで千鶴に約束をこぎつけ今三人で寄り道がてら一緒に帰っている。




「担任に部活入れって言われて?拒んでるうちにオサムちゃんにテニス部入れられて?担任にも判を押されたと」
「そういうことー」
「へぇー」
「で、仕事はしたの」
「こないだ一回」
「一回……」
「そしてそこでケンヤくんに巡りあったのです」
「あ、コートで謙也くんに会ったんだね」




うふふ、と両手を胸にあてる千鶴を見ながら紗雪はきもっと呟いて千鶴を叩いた。彼女がテニス部になった経緯が結局紗雪は良く分からなかったのだが、とりあえずオサムちゃんのせいらしいと言うのは間違っていないようなのでそれでその話は終わりにした。
近くのファーストフード店に入り、シェイクを頼んで適当に座る。ずず、と吸いながら千鶴は何かを思い出したかのような表情をして、話の方向を二人に向けた。




「文化部と運動部両方入んなきゃいけないんでしょ」
「うん」
「二人は運動部何入ってんの?」
「「バドミントン」」




じ、じみ!と言った千鶴の額を紗雪は指で弾いた。「なんかもう千鶴と話してるとだるい」と言いながら机に突っ伏すので、代わりにというか、由依が千鶴に部活のことを話した。

元々この学校にバドミントン部なんてものは存在しなかった。一年の頃知り合った紗雪と由依が作りたいねと話し一年の時に先生に話したが断られ、校長に直談判。一年生の威勢が良い!と言うことで何故かオーケーされ、一年の間は部員集め。
二年のときに新しく作られ、新一年も入部してくれたりと自分たちで作ってきた部活だ。そしてなにより。



「私たちね、結構強いんだよー!関西大会にも出たの、二年連続」
「うっそ、ほんと?!すごい!!」



部活を立ち上げた二人が異様に上手かったのが強みであった。早いスマッシュ、的確なコントロール。中学生にしては上手すぎるほどの実力者だった。それに驚いたのは学校側で、こんなに強いならと部費もしっかりと作って貰い、そしてそんな強い子がいると聞いたバドミントンのコーチが自らコーチをさせてくれと頼んできたのでそれを喜んで受け入れた。
そうして部活らしい部活になり、二人にしごかれ下も強くなっていく。今やこの僅か二年の間で他の中学に目をつけられる強豪校扱いだ。そんな話を聞けば千鶴は目を輝かせて凄い!と興奮したように体を揺らす。




「えっ、ヤバいじゃん凄いじゃん!知らなかった!」
「でしょ」
「今年も中々健闘したんだよ?」




準決勝までは進んだのだが、何分出来立ての部活なので充分にそれぞれが成長出来なかったせいもある。最後の大会ということで恥ずかしながら皆の前で涙を流したものだ。
もう随分前のことのように感じる、時の流れは早いと二人はしみじみと思った。ちなみに年寄りくさいというコメントは受け付けていない。




「だからね、千鶴ちゃんもそれくらい楽しくなる部活に入れたらいいねって思って」
「だからの意味分からないよ由依」
「楽しいもなにももう決まっちゃってるけどね!」





三人が順番に一言話していって、何だかおかしくなって笑ってしまった。







(学生生活、楽しくいきましょう)












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