誠意を伝えましょう





”▽▽○○です!”と遅刻した為に急いで教室に飛び込んだ私に、



『グルルルルァア!!』



と、見たことの無いような不思議な生物が、私に向かって飛び込んで来た。



「えぇえええっ!!??」

「小鬼だ…!」

「何それぇぇえっ!!」



と言いながら、私に向かってくる小鬼に、持っていた革の鞄を大きく振りかぶった!!


バン!!と大きな音がして、見事に大当り!ホームラン!

小鬼は教室の端まで飛んで行き、壁にぶつかった。



「おぉ……私、野球選手になれるかも…革の鞄凄いな、特注なだけある」



と、特注品の鞄に私は一人感心していたら、”きゃあッ”と言う声と、ドドドと言う銃声が聞こえると、女子生徒を襲おうとしていたモノに弾は命中する。



((凄い、的確……あれ、この人って……))



『グルッ』 『グルル…』



と”ホブゴブリン”と呼ばれる不思議な生物が、まだまだ、ボト、ボトと教室の天井から落ちてくる。


((凄い状況……授業どころじゃないっぽい…というか、机の上にいる犬って、おじ様では!?))


「お、おじ……」

「教室の外に避難して!」



私がおじ様に話かけようとしたら、”避難して”と言われてしまう。

そう声をかける、黒く長いコートの様な服を着ているこの人は……

入学式で新入生代表をしていた彼では……。




「え、代表挨拶してた”奥村雪男”?何で?」

「はい。担任の奥村です。初日から遅刻してきた、▽▽○○さんですね?今は急ぎますので落ち着いてからにしましょうか」



”外に出て下さいね”と、奥村くんは私にニコリと笑って、教室にいる他の生徒を急いで避難させる。



((………な、何だか黒い笑みだったな……んん!!?))


先に教室を出た私だったが、後から続く他の生徒がチラっと見えて一気に心拍数が上がった。


((な、何でっ!!?))


キョロキョロと、廊下を見渡すが、隠れられそうな柱などなく、持っていた鞄で顔を隠しながら、後ろの方へ下がる。


生徒を外に出した、奥村雪男くんは……担任と言っていたから、奥村先生と呼んだら良いのだろうか?



「ザコだが数が多い上に完全に凶暴化させてしまいました。すみません僕のミスです。まだ新任なもので…」


((へぇ、奥村先生は新任なんだ……))


「申し訳ありませんが…僕が駆除し終えるまで外で待機していてください」


((え、そ……それはやばい!!私の状況がやばい!))


”奥村くんも早く……”と奥村先生が”奥村くん”と声をかけたら、思い切り、バン!!とドアが閉まって、近くに居た女子生徒が”きゃっ”と言っていた。



「!!ビックリしたぁ……はっ!おじ様はっ…」



突然大きな音を立てて閉まったドアに驚いたが、私は足元を見て、犬姿のおじ様を探したが居なかった。



((中に入りっぱなし!?そんなっ……塾の鍵の事とかあったのにっ!))



私は教室の扉を開けようと近づき、ドアノブに手を掛けるが、中から凄い物音や銃声が聞こえて、入るのを止めた。



((間違って入って、銃で蜂の巣にされたら嫌だもんね!))



クルっとドアを背にして振り返ると、私の目の前に大きな影が出来る。

ハッと、男子の制服だと気付いた時には遅かった。



「んよぉ〜!今朝は、どぉも世話んなったなぁ”▽▽○○”さんやて?、あ゛ぁ?」

「ひゃぁぁああ!!」



隠れるのを忘れていた。

何のために先程鞄で隠していたのか……”彼ら”に見つから無い様にだったのだが。


私が今朝自転車で、ある意味ひき逃げをした人達が、何故か塾にいて凄く焦っていた。


トサカの様な金髪メッシュで、ピアスもあけたそのチャラチャラした容姿と、凄い形相で上から睨みつけられれば、紛れも無い、今朝の自転車の下敷きにしてしまった人だ。


条件反射で、鞄で顔を隠してみるが、”今更無理やで、もう覚えたかんな!”と、追い討ちをかける様に言われる。


私の、名前も顔まで覚えられていてはもう逃げられない。



「ぼぼぼぼ、ぼんさん!!すみませんっ!け、けしてその…悪気があった訳では……」



”すみませんでした!”と、床に座り込み、手をついて腰から90度の最高敬礼という土下座をして、とりあえず謝る。


「ふん。謝りもせんで逃げてく最低なヤツや思っただけやっ!」

「そ・・・そうですよね・・・すみません。以後気をつけます」



私はまた深々と頭を下げる。



「けどな!土下座とかそこまでせんでえぇ!!こっちが手前に土下座させとるみたいやろがっ!」

「ぼんさん!ありがとうございますっ!」



私の土下座で、精一杯の誠意が伝わったのか、どうやら坊さんは許してくれたらしい。


と、”ぶっくくく!”と近くで吹き出して笑う声が聞こえる。



「”ぼぼぼぼぼんさん”て、坊の事そないな風に呼ばはったの初めて聞いたわ〜!あと、さん付けもやなぁ」



顔を上げて見ると、これまた今朝、私が下敷きにしたピンク髪の人が笑っていた。

と、隣には眼鏡の坊主頭の人も一緒だった。



「まぁ、坊落ち着いて下さいね。どうやら同じ塾生みたいやし、いつでも仕返しは出来ますから!」

((い、今サラっと、仕返しとかって言った!?))

「俺はこんな可愛えぇ子と同じクラスやて、大歓迎なんやけどなぁ〜!よろしゅうなぁ!」



私が床に座り込んでいるものだから、彼は屈んで私の目線に合わせて、ヘラヘラとそう言ってくる。


((チャライのはこっちか…))



私の床に着く手を、ぎゅっと握り



「なぁなぁ!▽▽○○ちゃん言うんやろ?○○ちゃんて呼んでもえぇ?俺、志摩れん……」



ゴン!!と思い切り音がしたと思ったら、”坊さん”に叩かれていた。



「お前はいっつもそうやって、恥ずかしくてしゃぁないわっ!」

「っつ…!坊、酷いやないですかぁ!ただ挨拶してただけですぅ」

「志摩さんはエロ魔神なんで、▽▽さん気をつけて下さいね!」


”はい…?”と不思議そうに言う私だったが、”志摩れんくん”は泣き声で



「子猫さんも酷いわっ!俺の黒歴史を言わんでもっ」



((黒歴史なんだ……何だか面白い3人だな…))



ぎゃあぎゃあと騒ぐ3人……主に騒いでいたのは志摩くんだが、を床に座りながら、私は鞄から煎餅を出して見学する事にした。


((……煎餅…ボロボロに割れてるし…))


先程、小鬼を殴った時だろう。

袋から出して、小さくなった煎餅のかけらを食べながら、他のクラスメートも見る。


((えぇっと…3人の他に、男子2、女子2か…))


ボリボリと煎餅を食べながら、他の塾生徒の様子を伺う。


女の子2人は二人でお喋りをして、フードを目深に被り、ゲームをしている男子と、ぬいぐるみのパペットで遊ぶ男子。



((成る程ね…私、やってけるかなぁ…))



と煎餅を食べながらそんな事を考えていると、ガチっとドアが開いて奥村先生が出てくる。



「すみませんでした皆さん」

「あ、見付かった…」

「……床で何してるんですか?▽▽さん?」



ドアの前で座り込み、思い切り煎餅を頬張る私を見られてしまった。

開いた教室の中から、テテテとおじ様がやってきて、私にパチ☆とウィンクする。

私は立ち上がり、膝の汚れを掃い、犬の姿のおじ様を抱き抱える。



「見なかった事にしましょう……では、別の教室で授業再開します…奥村くんも!」

「…はーい先生!」



教室の中から”奥村くん”と呼ばれて、もう一人男子生徒が後を追う。

その男の子と目が合い、ニッと笑って話かけられる。



「お、さっきの鞄攻撃凄かったな!」

「あ、ありがとう、ホームランね!」

「ホームラン?まぁ早く行かねぇと雪男に怒られちまうぞ!アイツ怒ると怖えぇかんな!」

「うん!ありがとう」



私もニコって笑う。”先行ってるぞ!”といって先を行く彼の後ろ姿を見ると、抱えていたおじ様が”○○”と私の名を小さな声で呼ぶ。



『”彼”が奥村先生の双子の兄で、”奥村燐”くんですよ』

「そうなんですね……」

『○○、どんな気持ちですか?』

「私ですか?私は……」



抱えていたおじ様を床に降ろし、私も一緒にその場に屈み込みむ。

そして、ふわふわとする頬辺りの毛を、思いっきり強く引っ張る。



「私は怒ってますよっ!!おじ様にっ!」

『イタタタタタ!何をするんですかっ!○○!』

「鍵違うの渡しましたねっ!!そのせいで私遅刻したんですからねっ!!」



パッと手を離し、”後で取りに行きますから”とだけ言い、立ち上がって奥村くんの後を追う事にする。



『お待ちしてますよ”○○”』



背の方から聞こえるクスクスとした笑い声に、おじ様に問われた”どんな気持ちか”という答えは、私の胸の内だけに留めておいた。












。。






京都組みとの絡みが好きなんだ!


12/04/20




[ 14/16 ]

[*prev] [next#]

[mokuji]

[bookmark]





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -