秘密の扉への鍵
『○○、お久しぶりですね☆』
フワフワとした毛並みの、ワンちゃんに”お久しぶり”とか言われても、私喋る犬の知り合いなんていないのですが……と思ってしまう。
私は、しゃがみ込んで
「えぇと……どち」
『メフィストです!……酷いですねぇ…』
私が不思議そうな顔をしていたからか、言い切る前に名乗られてしまった。
「お、おじ様っ!?いつの間に犬になっちゃったんですか!?」
『おじ様っ!…これまた懐かしく……いぃ響きですね!』
「……昔そう呼んでたから仕方ないじゃないですか……フェレス卿のがいいですか?」
私は我慢出来なくて、犬になったおじ様の、フワフワとした毛並みを撫でる。
『くすぐったいですよ!名はどちらでも構いません。○○は随分と綺麗になりましたね!』
”すみません”と私は言いながらも、フワフワと撫でる手は止めなかった。
「それはどうも、ありがとうございます。おじ様は知らない間に、随分と可愛いらしくなられたんですね!」
『勿論ですとも☆さて、○○移動しますよ。ついて来て下さいね』
「はい、わかりました」
小声で話してはいたが、よく考えたら、まだ生徒が大勢いる所で、犬に向かって話しかける私は、端から見たらイタい人だったろう。
移動して正確だったかもしれない。
人目につかない所まで来た時に、急にポンン☆とおじ様が、人の姿に変わったので私は驚いてしまった。
「急にビックリしましたよっ!相変わらずド派手で奇抜な服装なんですね!犬のがよかったです」
「……直球で言ってくるのは、○○くらいですよ…」
”素直だと言って下さい”と私はニコリと笑い、また思っていた事を話し続ける。
「それと、入学式のパンフレットに載ってた”ヨハン・ファウスト5世”って胡散臭い名前もおじ様らしいですね」
「……昔の”○○”の方が可愛いげがあったかもしれませんね……」
「何か問題でも?」
「いいえ、ありませんとも!」
”何か機嫌をそこねさせてしまった様ですね”と私の機嫌とりの為か、ポン☆とおじ様はドーナツを出してくる。
「怒ってますとも!こんな、ドーナツ一つで機嫌は直るものですかっ!………むっ、美味いですね」
「………そう言いながら、ちゃっかり食べるのですね!相変わらず○○は面白い」
「だって、呼び出すのが急過ぎます!私だって地元でのんびり、高校生活エンジョイしたかったんですよ!」
そう、私は正十字学園ではなく、地元の高校に行くはずだったのだ。
それがここ1週間くらいに呼び出されて、何故かこの学園に来る事になってしまったのだった。
「アナタは勉学など必要無いでしょう?」
「勉学もですが、私は青春謳歌する必要があるんですよ!大事な事ですから!」
「それでは、十分この学園で愉しんで下さい。ご迷惑をおかけした変わり、必要なものは用意致しましょう」
おじ様はククっと笑っていたが、いろいろ用意してくれるのであれば助かる。
私はここぞ!とばかりに”42型テレビ、ブルーレイとパソコンと……”欲しいモノを羅列したら”それは無理です☆”とキッパリ言われた。
「それなりに働いて貰ったら考えましょう☆」
「……残念。わかりましたー」
「それでは○○、塾の鍵渡しておきますよ!私はこれから”彼”を迎えに行かねばなりませんから」
鍵を手渡されて、”遅れないで下さいね!”と言うおじ様に、私は返事を返した。
「いやぁ〜今日は本当に桜がキレイですねぇ」
「本当ですね……鍵、ありがとうございます。おじ様、それではまた」
おじ様と別れた後、私は少し綺麗な桜を見ていた。
桜の美しさは、いつになっても変わる事がない。
昔も今も………美しく咲き、そして散っていく。
「さて、行きますか……」
私はおじ様に貰った”塾の鍵”を使い、近くにあった扉にその鍵を差し込む。
”いつでも、何処の扉からでも塾に行く事が出来る便利鍵”だそうだ。
「一年生の教室は、一一○六号教室・・・と」
教えて貰った塾の教室を復唱しながら
ガチャリとドアノブを回し、扉を開けると…………
「あれ??」
青々とした空と、石畳の細い通路に繋がっていた。
パタン。と私はドアを閉めてもう一度、鍵を入れて開けてみる。
が、………同じ景色が広がっていた。
「これ、絶対違う鍵でしょ…………」
→
。。
胡散臭さいっぱい☆
12/04/15
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